第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
「雅?!」
俺は雅を腕で抱えた。
左腕の傷口がちと痛んだが、そんなことどーでもよかった。
雅は呼吸が荒く、目がうつろになっている。明らかにおかしい。
「お、おいッ!」
呼びかけにも応じず、苦しそうにしていて意識も朦朧としている。
雅のはちまきを取り、おでこに手を当てた。
(微熱?風邪か?いや、そんな甘っちょろいもんじゃねェ。外傷は……)
「!」
首元あたりに、何か妙な傷があることに気付いた。
針で引っかかれたような傷で、若干血も出ている。
一見、致命傷には程遠いひっかき傷だが、俺は妙な違和感を覚えた。
(ま、まさか…)
「毒に…やられた…ようだな……」
わずかに意識を戻した雅が、自分の状況にいち早く言い当てた。
「ハハ……まさか、よりによって……ッアンタの前で…こんな醜態さらすとは」
目がかすむ中、らしくもなく笑みをこぼした。
「何でこんな時に笑って……。!」
こんな状況で笑う理由を、俺は覚えていた。
『あんな顔見せられたんだ。あの人はあのままだとパニックになり得たから、私はただいつもと違う対応をしたに過ぎないよ』
相手を落ち着かせるためにする。つまり雅は……
(嘘…だろ……)
俺の頭の中に、“死”という言葉がよぎった。
一方、桂たちはというと、
俺たちは絶望的状況下から、最後には己の部隊をも離散させ、たった二人で敵の軍勢に飛び込み囮となったのだ。
そこから先の事は覚えていない。
ただただ眼前の敵を斬り伏せただただ走り、気がつけば俺達は血みどろになり森の中に倒れていた。
喉が渇いているのが不思議だった。息をしているのが不思議だった。涙が流れたのが不思議だった。
でも今ならわかる。俺はただ嬉しかったんだ。友を守りきれた事が。
そこにポカリが売っていたことが。
¥4500。値段を見て納得した。
「ボリやがる」
銀時がつぶやいた。
「四千円しかねェ」
銀時がつぶやいた。
「俺が一万円持っている。とりあえず俺が2本買ってやるから、四千円渡せ。500円は後から返してくれればいいから」
俺がつぶやいた。