第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
「雅!早まるなッ!!」
今回の雅は明らかにおかしい。冷静さを失えば、必ずボロが出る。
雅は敵に押し負けて、勢い良く向こうの川に落ちてしまった。
バシャーンッ!
「雅!」
マズい!水ん中じゃ満足に動けねェ!
いくら銀時とは違い、泳げるとしてもだ。
俺が左腕使えねェより、全身の身動きを封じられる方がよほど深刻だ。
「浅はかな」
敵の注意が川へ向いているうちに、俺は敵の背中から心臓ごと一太刀食らわした。
それでも敵は怯むことなかった。
(致命傷を2度も負ってらあ。なのにまだ動けんのか?)
敵は高杉を振り払い、水中の雅をとどめを刺しに、高杉は雅を助けに川のそばまで来て彼女を探した。
(どこだ?)
プカ…
『!』
雅の陣羽織の背中が水面で浮かぶのが見えた。
それをいち早く気付いたのは敵の方で、そこめがけて渾身の一撃を与えた。
バッシャーンッ!!
水面は荒れ狂い、視界は水しぶきで覆われた。
「ッ!雅ッ!」
「む…!」
敵は拳に手応えを感じなかった。今拳をふるったのは、ただの布、陣羽織
・・
だけだった。
バシャアッ!!
陣羽織を脱いだ雅が、敵の後ろあたりの水中から姿を現した。
(まさか、陣羽織を囮に…!)
左手の刀を正しく持ち替えて、このチャンスに全てかけた。
しかし、
ガアッンッ!
「!」
彼女の刀は、相手の首をはねるまでには届かず、折れてしまった。
「何ッ!」
こんな事態想定できなかった。
刀が折れたことで、間合いに隙ができてしまった。
敵はそのチャンスを逃さず、また再びさっきの打撃を打とうとした。
(診察待ちの患者がいるのに、そう易々くたばるわけにいかないんだよ…!)
雅は、折れた刀の柄の部分を敵の腕へ、刃先を右目に突き刺すことで、拳の軌道を狂わせた。
よって首元をかすっただけで、何とか回避した。
(刀が無きゃ、手の施しようが…)
メスか麻酔薬なしで腫瘍を取り除けと言ってるようなもんだ。
「その冷静さ。さすが軍医なだけはある。“我ら”(国)に組すれば、医術の才も十分に発揮できたものを」
打つ手なしか…
(否……刀ならまだある。とっておきのが
・・・・
もう一本)