第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
(相手が誰であろうと、大岩まで木っ端みじんにする威力に耐えられるわけがない)
まさか、己の死をも超越したとでも言うのか。“死神”とはよく言ったものだ。
「よくも仕事を邪魔してくれたな。邪魔されたからには、こっちも全力でアンタを潰しにかかる」
「……フッ。そのしぶとさ、死神は伊達じゃないか」
男は左腕を無くしながらも、全く怖じ気付くこともなく、むしろさっきより殺気がはっきりした。
「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ。そっちは片腕のハンデを持っちまったらしいが、俺はまだ両腕だ。もちろん“コイツ”(雅)もな」
相手は大烏。だがこっちは幾戦も乗り切った鬼と死神。
悪運はこっちの方が上だという確信はある。
「初診なら保険証と身分証明書が必要だが、アンタみたいな無法者にはそんなものはないか」
「無法者?それは貴殿らではないか?己の下らない野心で国の法から背けた愚か者が」
そして再び激しい戦いが繰り広げられた。
2対1や片腕のハンデをものともとしない敵の暗殺術。風のような素早さ。
さっきは運良く懐に入られたが、今度は易々と入らせてはくれない。
高杉も左腕の傷でうまく力を入れることができなく、敵の剛力を受け止めることも難しかった。
高杉は一旦距離を置くが、雅は
・・
逆に前へ出た。
「……だったらアンタらは、国が立てたその下らない法などにすがりながら、何人の無関係の人の屍を食らってきた?」
「!」
雅の刀を持った左手がわなわな震えていた。らしくもなく、怒りで力を入れていた。
「雅。お前…」
高杉はそれが気になった。
「その言いぐさ……お前、松陽だけじゃなく他に、身内も我らの手に掛かったか?」
敵の問いに雅は何も答えない。否定しなかった。
「フンッ。我々は国の法に背く奴らや、いずれ害になる反乱分子を処分してきた。つまりお前のその身内とやらも、無関係ではなかったということだ。現に今のお前だってそうだ」
雅は歯を食いしばった。
「……アンタら、一体何者だ?」
「それはこちらの台詞だ。生きた者の魂を喰らい、己の生命の糧とする。まさしく死する神よ。お前は、何のためにこの戦場を彷徨う?!」
「一緒にするな。人殺し」
敵がこちらに向かってきて、雅も前に出た。