第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
『雅さん!これ面白いですよ!』
志士たちの間では1つの息抜きとして上等な品があった。
男の熱い友情とロマンが込められた雑誌。ジャンプ。
『……そんなのが流行っているのか』
『これのおかげでもう毎週が待ち遠しっくて!ああでも銀魂の原作はジャンプギガに移った挙げ句、もう連載終了しちゃいましたけどね』
(これから戦に行く奴の言うことか?遠足と勘違いしてないか?なんだこの緊張感の無さ)
「とにかく読んでみてください!」の一点張りで、私は仕方なく読んでみることにした。
約○のネバーランド、○のヒーローアカデミア、○NEPIECE
1ページだけと決めていたのに、次の展開が気になってしまい、つい読み終わってしまう。
『……面白くなくはないね』
こんなことを知られれば、何て思われるのやら。
(これじゃ人のこと言えなくなる…)
仕事が最優先であるのは肝に銘じているが、時間に余裕があると、こっそりジャンプを読むようになった。
大掃除の時も、危うく辰馬に覗かれるところだった。
晋助が診察に来たときも。
高杉は恐る恐る襖の僅かな隙間を覗いた。
そこには彼女が机に向かっている後ろ姿があった。
(アイツ、こんな暑ィ夜もお勤めか?)
(え?もう来たの?)
引き出しに最新号のジャンプをしまって、机に向かっているふりをした。
「別に忙しくない。入っても構わない」
「!」
こんな日もあった。
(おかげでジャンプの話題を耳にすると、話が分かるようになってしまった)
と、話はこれくらいにしておこう。
今必要なのはジャンプじゃない。患者の治療だ。
敵は私が生きていることをとても不思議がっている。
「なぜ、何故だ…」
「“死神”と言ったのはアンタじゃないか。なら、私が蘇ってもおかしくはない」
そう言ったが、生き残れたのにはわけがあった。
(言えるわけがない。人並みよりも胸があったから、心臓への打撃が緩和されて、何とか生き長らえたなんて)
そして実はこれは、彼女のコンプレックスでもあった。
この場に他に女がいれば、嫌みに聞こえかねないが、誰にも言えないささやかな悩みであった。
(黙っておこう…)