第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
「グッ…!」
高杉は痛そうに左腕を抑えてうずくまった。
ボタ…ボタ……
人1人を支えていた負荷で、さっきよりも出血がひどくなっていた。
「早くしつけ(躾)、あ、間違えた。しけつ(止血)しなきゃ…!」
(俺をしつけてどうする?)
珍しく彼女は言い間違えるくらい焦っていた。
だが敵を倒してすぐに自分のやることを分かっていた。
ここまで傷をひどくさせた責任感もあり、何としても早く処置したかった。
まず、神経など大事な部分が損傷してないか確認するために、傷口の出血を拭き取る必要がある。
ウエストポーチからガーゼと水が入った竹筒を取り出した。
(すげェ入ってんな。ドラえ○んか?)
高杉は大怪我にもかかわらず、テスト前日のの○太みたいに呑気なことを考えていた。
(血の出方からしてやったのは動脈ではない。それは不幸中の幸いだ…)
「傷口見たいから、陣羽織の袖切るよ」
「それァごめんこうむる」
ズリッ!
血の染みついた袖を無理やり脱いで、いや剥ぎ取って、さらに痛みが増した。
「痛ッてェな…」
「おい!それじゃ悪化するでしょ!バナナの皮じゃないんだよ!」
私は急いで傷口についてる血を水ですすぎ、ガーゼでふき取った。
向こうには川が流れていてそこまでいって水を調達しようかと思ったが、今は急を用するからやめておいた。
傷口をよく見て、私は安堵の息を吐いた。
「よかった…神経は大丈夫だ。今ここで塞ぐからじっとして」
「ここでか…!」
さっきまで激戦地だったのを、手術室にするのか。
前も同じことやってたが、まさか今度は俺が患者とァ。
「私が戦場に立つのはそういう状況のためでもある」
今度は麻酔薬を取り出して、使えるようにするまでの下準備をした。
「さっきはくたばっちまったかと肝を冷やしたぜ。まさかてめェが死んだふりするとァ…」
「……一応、本職は医者だから死体を多く見てきた。だから死体のふりはお手の物だ」
「お前が言うと説得力あるな」
“死んだ”といえば、死んだ魚の目をした生きた奴に2人は心当たりがあった。
麻酔薬を用意するのにもう少し時間がかかる。その間なら少しは会話する時間はある。
「…以前のハロウィンの茶番もそうだ。アンタを驚かせるのは、なかなかおもしろいものだな」
「お前最近軽くドSになってきてねーか?」