第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
もしかしてまたドッキリを企てるんじゃないかと、高杉は冷や汗をかいた。
けどそれ以上に、
「今回は本当に肝を冷やしたぜ。お前の言う通りヤバかったぜ…」
「……」
それに関しては雅も同感だった。
高杉の馬鹿力、あ、それは失礼だ。
高杉の力がなければ、仲間に気付かれず1人孤独で死んでいったかもしれない。
それか、2人で仲良くあの世行きだったかもしれない。
「……アンタは死なない。私がさせない」
「!」
高杉と目を合わせることなく、慣れた手つきで麻酔薬を注射器に入れた。
「アンタら死なせたら、松陽先生に合わせる顔がない。救うべき人を救えなかったら、“私”(医者)がここにいる意味がないからね」
『もっとも君は人を救う術を持っている。その点でも、君は周りとは違います。
だからこそ今でもそう、これからも君は誰よりも優しい人間になれる。私はそう思ってます』
あの時に言われた松陽の言葉を、今でも覚えている。
あの人の言う、優しい人間になれているかは知らない。でも、
(この術で人を救いたいと、今は思うよ…)
「松陽先生に頼まれたんだ。“銀時やアンタらが困ってるとき、力を貸してあげてください”って。約束したんだ。だから誰も死なせない」
“仲間を皆を護ってあげてください”
あれは銀時だけじゃない。私に向けた言葉でもあったから。
「じゃ今から麻酔入れる。腕全体に効くまでじっとしてて」
「ああ…」
“仲間を護る”
それは彼女が仲間想いだからなのか。それとも戦に勝つためや軍医としての責任感があるからなのか。
どっちなのかよく分からない。
でも、彼女が優しいことは高杉には分かっていた。
(なら俺も約束してやる。てめェを絶対死なせ…)
フォンッ!
ドガァッ!!
「!」
突風が荒れ吹き、地面が割れる大きな音が鳴った。
砂ぼこりで周りが見えなくなった。
「何ッ?!」
高杉は左腕の袖を戻して刀を構えた。
まだ麻酔の注射は打たれていない。いや、打たれる瞬間、何かが自分たちを襲った。
「雅?!」
呼びかけても返事がない。一体どこにいったのか?
砂ぼこりが晴れて、ようやく状況が分かった。
雅が向こうでぶっ倒れていて、新たな敵が目の前に現れていた。