第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
木の上から敵がまた降ってきた。
烏は電線でよく人間を見下しているが、やはりお高いところがお好きなようだ。
(今度は3人か…!)
せめて木に刺さった小刀だけでも取り戻そうと手を伸ばしたが、敵が阻んだ。
(ッ…!)
小刀は払いのけられ宙へと舞った。
私は刀を鞘に納めて、真っ正面から敵に向かっていった。
そうすれば、敵は私“しか”注意を向けない。「正面から殺されにくるとは馬鹿か」なんて思うはず。
(ここだ…!)
宙を舞ってた小刀は、ちょうど敵の頭の斜め後ろあたりまで落ちてきた。
そのタイミングを見計らい、小刀の柄の部分をねらって回し蹴りし、敵の後頭部に刺した。
頭を貫通された敵は戦意喪失になり、私は敵の頭蓋骨から小刀を抜いた。
傷口からは赤い液体が噴水のように勢いよく吹き出て、即死した。
(悪いが、型にはまるような芸だけじゃないんだ…)
しかし敵と刀での押し合いで押し負けて倒れてしまう。
「…ッ!」
敵が上から体重をかけてきて、私は刀で防御を余儀なくされた。
他の敵が、追い打ちにやってきた。
(やべ……)
ズシャアッ!!
『!』
敵の背中が血でしぶきをあげて、バタリと倒れた。
そこには、私とは違う陣羽織を着た見覚えのある奴が。
「おい。うちの軍医に何してやがる?」
「アンタはッ!」
あの名高い鬼兵隊の総督が来て、奈落の目は私よりも高杉の方へ向けられた。
その隙をついて私は敵を斬り伏せて、高杉と背中合わせになった。
「遅せェから様子見に来れば……何があった?」
「烏が産卵期で山の中で巣作りしていたところ、怒らせたらしい。アンタよく気付いたな」
「時間に律儀なてめェのことだから、変だと思ったんだ」
自分たちの周りには、敵がまだ30ほどいた。
2で割ってもまだ15人も残っている。
そして雅はすでに、16もの敵を仕留めていた。
そこらへんに血を流した死体が転がっていた。
「これ、全部お前が……」
この光景を見ると、あの時の雅の笑った横顔を思い出してしまう。
「少ししんどかったが、銀やヅラはもっとしんどいはず」
こことは別の山、永禄山で囮役を引き受けて、今でも戦っているはず。
奴らがボロボロになって帰ってきたとき、誰が治療するんだ?
私はくたばるわけにはいかない。