第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
拠点の寺にて、
辰馬の軍と鬼兵隊が戦から戻ってきた。
銀時と桂のおかげで負傷者の数もそれほど甚大ではなく、雅がいなくても治療はできた。
「桂さん銀時さん。俺たちのためにあんな軍勢相手なんて無茶だ」
「だが、そこは信じるしかねェだろ。それが仲間ってもんだろ」
「けどよ。今回はレベルが違う」
怪我が比較的軽く、戦による精神的ダメージが少ない者たちはそんな会話をしていた。
「大丈夫ですよ。銀時さんも桂さんも。あの人は必ず帰ってきます」
黒子野が輪の外で仲間らしいカッコいい言葉を口にしたにも関わらず、影が薄いせいで誰も彼の言うこともその存在にも気付かなかった。
「黒子野!今回の戦いっぷり、まっこと見事だったぜよ!」
だが、意外と彼の存在を見ている者もいた。
一応、声がデカい分仲間も大切にする坂本辰馬だ。
「ありがとうございます。でも僕は皆さんの援護をするどころか、周りに助けてもらったりもしました」
「そりゃそうじゃ。戦はただ仲間護るんだけじゃ成り立たん。助けてもらう仲間がいなきゃ、助けられんからのう」
ガハハハハと相変わらず大きな声で笑った。
そのとき、いつもなら「ちょっと声でかい。患者の傷に響くからもう少し小さくして」と、彼女が注意するはずだった。
だが、その彼女がいない。
それにいち早く気づいたのは、帰ってきたばかりの高杉だった。
「おい。雅はどこだ?」
「雅?そういえばいないのう。
おーい。誰か麗しき我らが軍医を知らんか?怒らせたらちょっと怖いが、顔はガッキー似のかわいい奴じゃ!」
「長ェしもっと簡潔に言えや。それにそんなん知ってらァ」
・・・・・
「ほう?知っとると?」
あ、ヤベ。しまった。
高杉はつい口を滑らせ、口を手で押さえた。
違う別の軍医が教えた。
「雅さん?確か山へ芝刈りに、あぁ違う。山へ医療植物を採りに行きましたよ」
「山?」
「じゃあ川へ洗濯に行ったのは誰じゃ?」
「誰も行ってません」
愉快な仲間たちが会話しているのとは裏腹に、高杉は何だか昨日とは違う胸騒ぎがしてきた。
「おい!いつここを出た?」
「えっと。あ!1時間くらい前にはすでに。でも30分で帰ると言ってましたが……」
言い終わるよりも先に、高杉は外へ出て行った。