第10章 約束ってのあ、守れなかったときが残酷だ
雅は陣羽織を脱いで、ウエストポーチから麻酔注射、手術用糸と針とナイフを取り出した。
「雅。おまん…」
辰馬たちは彼女を見守ることくらいしかできなかった。
「辰馬は他の皆を連れて先に行って」
「何を言うがか。ワシは仲間を見捨てんぞ。おまんのその手術中に敵が来た際の足止め役をやらせてもらうぞ」
辰馬だけじゃなく、他の者も同意見だった。
「……ここにいれば、惨いものを見ることになる」
「そんなR15なんてとっくに見慣れている。ワシはこの場の指揮官として、このような事態になった責任と仲間のそばに付き添う義務がある」
「…そういう意味じゃないんだ。今回は……」
辰馬と言い合いをする時間もなく、雅はなぜ先に行ってほしいかを話した。
・・・
「アイツの腕も切断するから」
雅が指さしたのは、右腕を潰された男の方でなく、岩に押し潰された死体の方だった。
なんとこの場で、仲間の死体を切ると言ったのだ。
「雅さん…今アンタ、何て言ったッ!!」
1人の仲間が声を荒げた。
勇敢に戦った仲間の亡骸は、安らかに天国へ行けるよう手厚く埋葬すべきだ。
なのに追い討ちをかけるように、死んだ者の腕を奪うなんて。
勇敢に戦死した武士の誇りが許すはずがない。
「言葉通りだ。“切断”する。“アイツ”(死んだ者)の腕を“コイツ”(生きる者)に移植して、繋げる」