第10章 約束ってのあ、守れなかったときが残酷だ
(あともう少し。前に進めば…!)
バッ!
私の肩にいた負傷者は、私の背中を押して突き飛ばした。
“え?”
ドォォンッ!!
岩が落ちてきた爆風で、突き飛ばされた私はさらに吹き飛ばされた。
しかし辰馬が手を掴んでくれて、崖に落ちることは防げた。
「大丈夫か雅?」
「すまん」
そうだ!あの人は…!
体は岩の下敷きになってはいなかったが、運悪く右腕だけが犠牲になっていた。
彼女の目は、医者の目へと変わった。
男の状態は、右腕だけが岩に押しつぶされて身動きが取れない。
「雅さん……ご無事ですか?」
右腕が大岩に押しつぶされて、発狂するほど痛いはずなのに、それどころか笑って彼女を心配した。
「アンタ…」
「ハハハ……アナタが死んでしまったら困りますから。俺の…親友の…命の恩人ですから」
そう。この男は昨日、雅と高杉が医務室にいたとき、親友の見舞いに来たあの男だった。
『俺の親友を……大切なダチを助けて下さい…!お願いしますッ!』
『俺たちの力を幕府に見せつけて、この調子でさらに上を目指しましょう!』
あの前向きで真っ直ぐな目をした男は、侍の命である腕を、今失った。
(…ッ!)
雅は責任を感じた。
私の存在で、この場に負傷者を広げてしまったのかと。
しかし、それよりもやることがあると気持ちをすぐ切り替えた。
(どうすれば、この人を助けられるか…)
ここに残っている全員で岩を持ち上げるのは無理だ。
援軍を頼もうにも、その前に敵軍が来てしまう。
敵はここまで着くのは、恐らくあと30分くらいだ。
ここらへんの地形は泥沼とかが多い。少しは
・・・
足止めになってくれるはず。
「……今から私が言うことをよく聞いてくれ」
多量出血で意識が朦朧としてきた中、男は小さくうなずいた。
「アンタの右腕をここで切断する。それしか、アンタを救う方法はない」