第10章 約束ってのあ、守れなかったときが残酷だ
「皆…」
他の仲間たちも私をまっすぐに見て、この場を託すかのようだった。
「……恩に着る」
ガッ!
辰馬の両手の平を踏み台にして、思いっきり飛んだ。
体勢を崩した辰馬は、そばの仲間によって支えられた。
「行けェェッ!!」
雅は上の敵とようやく同じ目線まで登れた。
「ハッ。貴様のようなおなごが来るとは。人選ミスだな」
カチャリ
敵は目の前で空中に浮いている雅に銃口を向けた。
空中にいれば弾丸ほど早いものをかわすことはできない。
しかし、何も考えずただ敵の前に姿を現した雅じゃなかった。
腰の小刀を右手で敵に投げて、それは見事に敵の首に当たった。
「グアッ!!」
そしてそれはただの小刀ではなく、柄の先に糸をつけた細工されたものだった。
手術に使う際の丈夫な糸を、事前につけていたのだ。
その糸を引っ張れば、天人が崖に落ち、逆に雅は天人がいた場所へ引っ張られることができる。
スタッ
雅は自作糸付き小刀で天人と入れ替わって、無事に崖の上へ到達することができた。
「き、貴様ッ!!!」
ダァンッ!
雅はくわえていた刀を持ち直して、弾丸を斬った。
辰馬たちが登れるようにロープを下に垂らして、そしてそのロープを敵から死守した。
「ここから先は行かせない」
雅のただ者じゃない目に天人たちはビビりながらも、多勢に無勢で襲いかかった。
辰馬たちはロープで壁をよじ登って、早く加勢しようと急いでいた。
「辰馬さん!雅さんが!」
「さすがじゃな雅は。ワシらだけでなく、この戦場で敵にも襲われるほどモテモテとは」
「言ってる場合ですか!!」
と、辰馬はこんなに呑気にしていたが、この場の誰よりも知っていた。
雅の実力とその強さの根源を。
彼女はこの反乱軍において無二の軍医。
人を救いたいという覚悟も想いも、誰よりも強い。
その志はこの場の誰よりも強靱にできている。
それに比例して頭も固いが。
(アイツがいる限り、この戦は絶対に負けん)
アイツはそれほどの大きな力を持っている。