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君想ふ夜桜《銀魂》

第10章 約束ってのあ、守れなかったときが残酷だ



「雅ッ!」

銀時は二本持っていた刀の一本を私に投げ渡した。

それを掴み取ったと同時に、敵の刃が私の左肩を貫いた。

ドシュッ!!

しかし、私は刃を抜くために後ずさりするどころか、むしろさらに進んだ。

深く刺さる刃、肩からの出血など目にもくれず、敵との距離を縮めた。

「!」

「邪魔だ」

刀で敵の顔を斬り、自分の肩に深く刺さった刃を無理やり抜いた。

痛みなんてどうでもよかった。

(松陽…!)


突如、誰かが後ろから私を抑えて地面に抑えつけた。

「がッ…!」

刀を奪われて縄で手首を縛り付けられた。

「それ以上はお前の命が危ぶまれるぞ。松陽の弟子よ。師の犠牲を無駄にするな」

松下村塾は燃やされていく。大事な場所が消えていく。

銀時も敵に捕縛されて、必死に松陽の名を呼んでいた。

松陽は敵に連れて行かれながら抵抗もせず、口を動かしていた。銀時と私に別れの言葉を告げた。

親子のように過ごしてきた師と弟子が、切り離させる光景が、この目に焼き付いた。

私は今後ろにいる敵の面も目に焼き付けた。

白髪で目元にくまがある男だった。

「ッ、外道がッ…!」

悔しさで左の拳をグッと握りしめた。

「貴様、左利きか。!」

男は私の左手の甲を見て、顔色を変えた。

「お前は……!」

「?」

男はフッと笑った。

“……運命とは残酷なものだな”

あの男の言葉が何を意味していたのか。未だに分からない。


その直後、ヅラと晋助が駆けつけてきてくれて共に戦ってくれたが、彼らもまた捕縛されてしまった。

松下村塾は完全に焼け落ちてしまった。松陽を連れ去った烏は、飛び去っていった。

朝日が昇る中、私たちは焼け跡の中で無気力になり、後悔した。

私もまた。

意気消沈する銀時に、ただこれだけしか思えなかった。

“ごめん…ごめん…先生…護れなかった……”

私が松陽の異変に早く気付いたにも関わらず、何で助けることが出来なかったのか。

その理由は決定的なものだ。

私は、アイツらが、怖かったんだ。

かつて、自分が弱かったせいで何もかも失った。

そんな後悔を二度と繰り返したくなかったから、松陽から剣を教わった。

なのに、再び後悔してしまった。

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