第10章 約束ってのあ、守れなかったときが残酷だ
「……アンタがこれからどこへ行くかは知らない。だけど、銀だけじゃない。ヅラも晋助も、今でもアンタを必要としている。弟子の将来を見届けるのがアナタの武士道じゃないんですか?」
松陽先生はやれやれと困った顔になった。
「その通りです。だからこそ、私は彼らのために行くのです。もちろんアナタのために」
(え…?その言葉……)
松下村塾の外から、無数の足音が聞こえてきた。
「雅。約束してください。銀時たちには、
・・・・・・・・・・・・
言わないであげてください」
「!」
シャン シャン
何かの金具の音も聞こえてきた。
「アナタは、怪物なんかじゃありません。アナタはもう大丈夫です。自分の力で道を作れます」
大勢の追っ手がやってきたのに、松陽先生は笑みを絶やさなかった。
“雅。____に、よろしく伝えておいてください”
私は手を伸ばしたが、追っ手がそれを阻んだ。
(待て!松陽…!)
アンタとまだ話したいことが……!
「貴様、松陽の弟子か……」
たいまつの明かりで、その追っ手の姿が見えた。
その瞬間、全身の毛が逆立った。
(え……何で…?)
見覚えがあった。
同じ服装をした男たちに、危うく連れて行かれそうになったことがあった。
(てッ、“天照院奈落”が…何故ここに……!)
並べられた生首。ひび割れる大地。
いろんな記憶がフラッシュバックして、足が動かなくなった。
その場で転んで、恐怖で怯えることしかできなかった。
「あ…ぁ……」
そんな様子じゃ抵抗してくることはないだろうと、追っ手は私を無視した。
松陽を拘束して、暗闇の世界へ連れて行こうとした。
(た、頼む…)
左手をグッと握りしめて立ち上がろうとしたが、足が震えてそれは敵わない。
(ぎ、銀と…)
「てめェら!何してんだ!!」
異変に気付いた銀時が松下村塾から出てきた。
気付いた追っ手たちは銀時に向かっていった。
「銀ッ!」
銀時は持っていた刀を抜いて、敵に対抗した。
「先生を、返せェェッ!!」
「!」
先…生…
私は銀時の大声で、悪夢から覚めた気がした。
そうだ……もう…失いたくない……
左目から涙がポロリとこぼれ落ちた。
そして冷たい目つきへと変わった。