第10章 約束ってのあ、守れなかったときが残酷だ
「…なら、アンタは自分の幸せのために、宇宙に行くってことかい?」
「そうじゃのう。ワシにとって一番の幸せは、自分らしく好き勝手に生きることじゃ。じゃから、ワシは好き勝手に宇宙に行き、色んな御客との縁に恵まれたい。例え天人だろうとな」
辰馬は自分の夢を嬉しそうに語り、彼女は続いて静かに語った。
「そんなこと考えたことがないから、何とも言えん」
今までもそうだ。仲間を医術で救うのは任務だから。
己の医術が、いや、“あの人”から受け継いだものが、皆を救っているのは嬉しいが、それを幸せと思ったこともない。
「そうか?結婚して子供作って幸せな家庭を築くんじゃないのか?」
ゲホッゲホッ
煙管の煙でむせた。
「いッ…言った覚えはない」
「あ。でも医者のおまんなら、子供の作り方とか夜の営みとか、ワシら以上に色々と詳しいはずじゃから、結婚したとき便利じゃな」
カランッ
辰馬の爆弾発言でうっかり煙管を落として、岩と岩の間に落ちてしまった。
「それは禁句だ。同じこと言ったら内臓えぐって喋れなくなるよう口に詰め込む」
それに私はそんなもののために、医術を身に付けたんじゃない。
R15までは仕方ないが、○○とか○○○みたいなR18までやるわけないだろう。
変な妄想するな。
「アハハハハハッ!おまんが言うと説得力あるなァ!」
辰馬の声がだんだんと大きくなっていき、それと比例するよに雅のイライラが大きくなってきた。
(コイツと喋っていると、バカが移りそうだ)
ペースを持っていかれる、何だが振り回されている気分だ。
晋助相手と話す方がよっぽど楽だ。
「でも、女医だと苦労するんじゃないか?だって、男があっち方面の相談とかしたらやりづらいじゃろう?」
「お前とは違う疚しくない奴なら相談に乗ってやらんこともない。もし玩具でも欲しければ自分で買え。もちろん戦の資金ではなく、自分の金で」
大事な煙管を拾って懐にしまった。
将来のことや、幸せについて語っていたのに、180°回転して別の話になってきている。
まるで銀魂そのものみたいになってきている。
雅はため息をついた。
「おまんは顔はいいからきっと良い縁に恵まれる。自信持ってもいい。じゃがも~ちょっと愛想があればなァ?」
「違う。自信の問題じゃない」