第10章 約束ってのあ、守れなかったときが残酷だ
「……そんなにいけないことかな?孤独になることは」
確かに、私は孤独だった。
行く宛もなく、幾道もさまよい続けた。
松陽に出会って、雨風はしのげても、誰かに心を許すことはできなかった。
“あの人”以外に理解者なんて必要ない、とも思っていた。
でも、あの負けず嫌いな少年によって、私の世界は大きく一変した。
苦手なはずの人混みさえ、気付けば心地よく感じていた。
“誰かと喜びを分かち合う”ことを知った。
(でも、私は昔のように目的もなく孤独になっていたのと違う…)
人間誰だって、目的や夢のためにいつかは孤独になる。
いつまでも誰かのそばに寄り添って頼っては、自分に向き合うことを忘れてしまう。
「…私にはやらなきゃいけないことがある。たとえ孤独と言われようとも。アンタと似たようなもんだ。ただそれだけだよ」
とはいっても、この戦で生き残ればの話だが。辰馬も。
「別に嫌なら引き受けなくていい。そのときは自分で何とかする」
「自分で何とかならんから、ワシに頼んできたんじゃろ?それに、何で銀時たちには言わんのじゃ?」
「……アイツらは私と同門だ。同じ師を仰いだからこそ、ヤツらを巻き込みたくない。迷惑をかけたくない」
(つまり、ワシには迷惑かけていいと?)
頼られているのか、迷惑かけても問題ないと思われているのか、分からなくなってきた。
「それに、アイツらがこの先何をしようと、私は何も干渉しない。好きにしろと言う。だから、アイツらに干渉される筋合いはない」
今回の彼女は、本当に無愛想だ。
たとえ仲間でも、過去の自分も未来の自分も話さない。
今現在頼られている辰馬は、彼女の将来に不安を感じた。
「ずっと前から思ってたんじゃが、1つ聞いていいか?」
「何だ?」
「おまんは幸せになりたくないのか?」
「!」
雅は煙管から口を離した。
「おまんがこの先、何をしたいのかは知らん。じゃが、それがおまんが幸せになるために必要であるなら手を貸そうぞ」
「……」