第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ
雅は昼の茶番のことを話し出した。
彼女の協力の下開催されたあのドッキリのことだ。
「謝るくれえなら、あのバカ共に乗らなくても良かったんじゃねえか?」
「大勢に土下座されてまで頼まれちゃ断りきれなかったんだ」
そう言えば雅は押しに弱かったか?
「でもまあ…何人かの間抜けヅラを見れたからよしとするよ」
言ってることとつまんなそうなツラが矛盾してるぜ
「死神か…」
雅は何か考え事をした後、いささか奇妙な質問をした。
「アンタは、本物の死神に会ったことがある?」
「は?」
そんなのいるわけねえだろと言おうとしたが、数少ない彼女からの質問なので真摯に答えることにした。
「そうだなあ、死神っつうのは、人を死に誘うっつう奴のことだろ? そんな奴戦で幾度も見てきたさ。だが、絵に描いたような奴は見た事ねえよ」
戦は“死”によって成り立っている。
相手を多く死に至らせ大将を討ち取れば、勝利を掴むことができる。
結局、ここにいる全員が死神だとしてもおかしくないかもしれない。
「お前はあんのか? そんなメルヘンなものを」
「かもしれない…」
雅は立ち上がって、棚を整理し始めた。
高杉からは見えない位置で取り出したのは、戦時中も衣の中に入れていた1枚の写真。
その写真をずっと見つめた。
高杉はそれに気付かず、座ったままその背中をぼんやり眺めた。
雅は俺と出会う前から、人の死を人百倍は見てきた
コイツの腕の良さで分かる
恐らく文字の読み書きを覚え始めるくらい小せえ時から、すでに医術を知ってたんだ
そして今俺が気になっているのは、
コイツにその術を教えた“師匠”は誰かだ
松陽じゃねえのはとっくに知ってらあ
銀時がコイツを見つけた時よりも以前、何があったのかも気になる
コイツのルーツを
「なあ、お前は最近やたらと俺に質問するよな?」
「そうだね。それが?」
雅は背を向けたまま返事をした。
「なら、俺の質問にも答えてもらうのが筋ってもんだろ?」
「質問による」
「お前のその医術。誰から教わったんだ?」
ピクリッ
雅は写真を懐にしまった。
「何故アンタがそんなことを聞く?てめーの事情なんか知るかと抜かしてたアンタが」