第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ
「うぁ…あぁ…」
パクヤサは意識がほとんど無い中、苦しそうにこっちに手を伸ばして、助けを乞うているようだった。
銀時は包み込むようにその手をとった。
(パクヤサ…)
ここ何日の戦でやっとありつけた休暇、しかも読者様方も楽しくめでてェ年越し前にも関わらず、2人も急病人が出るなんて。
考えたくねェが、急病人じゃなくもう死んで…
こんな大惨事、今までそんなこと一度もなかった。偶然にしては出来すぎている。
最も驚くべきことは、
あの雅の物と思わしき黒いノートに、2人の名前が書かれていたこと。
まさか、あれが原因でヅラとパクヤサは…
さらに銀時は、もっと恐ろしいことを想像してしまった…
広間に入るなと忠告され襖を閉められた後のこと…
広間内で志士たちが桂を応急処置する中、間もなくパクヤサの危篤が知らされた。
すると雅は苦い表情から次第に不敵な笑みを零す。
『フフフッ』
さっきまでの仲間を思いやる態度はすべて演技。
その表情は高杉が昨日の戦で見たのと同じ。
周りの志士に気付かれず、“DEATH NOTE”と書かれた黒いノートを手に持っていた。
“計画通り”
この偶然の連鎖の全ては、雅が仕組んだことではないか?
「おい。お前、覚えてるか?」
唖然としてる高杉に問い掛けながら、さっきと同様に口元をわなわなさせていた。
「あ、アイツはよォ…松下村塾にいた時から、黒魔術みてェなモンやってたよな?木の棒で変な魔法陣を書いて、その上に猫を置いて解剖してんの俺、見たことあるんだよ…もしかしたら…」
ダンッ!
高杉は掃除したばかりの壁を思いっきし殴った。
その反動で壁には殴った跡が残り、高杉の握り拳から血が滴り出た。
「アイツが…仲間を手に掛けるどころか、仲間を見捨てたことなんかねェだろ。
お前らの…誰よりも長い腐れ縁で培った信頼は、その程度の物なのかよ」
朝辰馬に向けたものとは違い、高杉は2つに対して、怒りを露わにした。
1つは、自分よりも付き合いが長いにもかかわらず、彼女よりどこぞの漫画のフィクションを信じる銀時。
そしてもう1つは、少しでも彼女を疑ってしまった自分。