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君想ふ夜桜《銀魂》

第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ



見覚えのある鬱陶しい長髪。

その髪には吐血した血がかなり染み着いていた。

つまり、ヅラがここで倒れて何分かは時間が経過してるということだ。

「お、おい!ヅラッ!」

高杉は再び桂の容態を確認しようとした。

しかし、あまりの状況に心は動揺し、うまく診ることが出来ない。

銀時でさえも…
そもそも高杉よりも不器用だから、こういう緊急時の処置は向いてない。

こんな時、一番冷静かつ素早く処置できるとしたら、思い当たるのは1人しかいない…

(今アイツが来てくれれば…)

取りあえず、こんな状況になった原因がないかと、辺りを見渡した。

その時…


「晋助、何があった?」

高杉の声を聞き取ったのか、運良く雅が小走りで来てくれた。

「雅!」

銀時や高杉が説明するよりも先に、彼女は状況を理解した。

桂が吐血してから時間が経ってしまっていることも、瞬時に分かった。

「そこ替わって」

すぐに高杉と場所を交代した。

いや、しゃがんでいた高杉を無理矢理どかしたと言った方が正しいのか…

高杉はこの瞬間、雅の変化を目の前にした。

普段の戦では、敵に気を取られてそんな注意深く見たことはなかったが、今確かに見た。

いつもキリッとしている彼女の目に、さらに鋭さが増た。

戦場にいるときと同じような。
醸し出される緊張感に強い覚悟を持った目。

見ていると、今自分たちが戦場に立っていると錯覚しそうだった。

手持ちの小型ライトを自分のポケットから取り出して、瞳孔に光を当てた。

彼女の表情はみるみる深刻になった。

(雅…お前…)

一体、何を悟ったんだ?

高杉は「何が分かったんだ?」と聞きたかったが、彼女が口を開くまで待った。

光を当て終えた途端、小型ライトを持った手を握り締めて、悔しそうに俯いた。

「おい雅…まさか…」

銀時は恐ろしくてそれ以上、彼女に聞くことができなかった。

ガバッ

彼女はすぐに立つと、他の仲間を呼んで桂を担架で運ばせた。

高杉と銀時には何もしないように伝え、そしてこの言葉だけを残した。


“向こうの広間でまた処置を行う。絶対に中に入らないで。最後まで最善は尽くす。だけど…
・・・・・・・・
覚悟はしておいて”

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