第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ
『は?』
2人は声を合わせ、目をぱちくりさせた。
表紙はほぼ真っ暗の黒なのに、中はほとんど真っ白だ。
次のページを開いても、また次のページも開いても何も書いてない。
あるのは、ノートの4ページ目に書いてある2人の名前。
ヅラとパクヤサ?何故この名前が?
見て分かるのは、これは雅の筆跡だということ。
高杉と銀時は考えていることは同じだった。
何故2人ともそれが分かったかというと、彼女は左利きなので、字も普通の人とは少し特殊なのだ。
右利きなら引いて書くところを、左利きなら押して書く。
しかしそれは僅かな違いで、見分けることなんて普通ならできない。
それも分かるとは、さすが幼なじみなだけはある。
そして本題に戻る。
2人はとても不思議に思いながら、取りあえず中の台所に戻った。
そして互いの頭が向かい合う感じでまたノートを覗き込んだ。
「こんな物騒なノート。アイツらしいっちゃらしいかもな」
銀時がそう呟き、高杉はまた考え込んだ。
確かに不気味なノート…いや、書き途中だったってことも考えられる
ノートを春画なんて連想するバカの言ってることが、本当じゃなくてよかったぜ
朝もいろいろあったからな。疚しいもんとかじゃなくてよかったな
いや、そもそも雅は医者だ
医術に携わってんなら、ガキの時すでに俺たちよりよく知って…って何考えてんだ俺
高杉は自分で自分をツッコんだ。
ガタリッ
『!』
台所の向こう側、自分たちの死角から何か物音がした。
怖がりやの銀時が恐る恐る近付くと、そこに誰かが机の下を覗き込むような体勢でいた。
「何だ…ビックリさせんな。掃除したばっかだから、自分の髪をクイックルワイパー代わりにする必要はもうねェぜ?」
しかし男は、それに返事もせずずっと動かない。
「どうしたんだ?」
呼びかけてもその体はピクリとも動かない。
銀時と高杉は顔を見合わせてからまた、床に伏せている人間に話しかけた。
「お、おい…」
明らかにおかしいと真剣な空気に変わり、高杉は体を揺らした。
『!』
口には、血を吐いたような跡が。
よく見たら、赤い液体は床にも広がって。
そして、その人間の顔を確認した途端2人は言葉を失った。
そんなことが、あるはずが…
「ヅ…ラ…?」