第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ
(アイツが体調不良なんて珍しいな…)
桂は松下村塾に入る前、幼くして祖母をなくし天涯孤独の身になっていた。
独りで暮らした時期もあったから、銀時とは違って体調管理はできているはず。
いや、長続きの戦だったから、休日が来たことで今まで蓄積された疲労が吹き出たというところか。
彼はリーダー格がある人だから、銀時と高杉の喧嘩を収めてきたストレスが爆発したのかもしれない。
脳みその中が爆発してんじゃないかと思うほどぶっ飛んだセリフを言う、自称天然挑発キャラでもあるが。
(にしても、喉が渇いたな)
起きてからの目覚めの一杯をまだ飲んでいなかった
台所に行くか
ヅラに言われたから丁度いい…
高杉はいつもより足滑りが気持ちいい廊下の上を歩いて台所へ向かった。
そのところを、木の陰で誰かが見ていた…
そして台所で、
(何か、きれいになったか…?)
窓から差し込む光が、いつもより一層強い。
ひょっとして、窓を磨いたおかげか。
と、高杉は掃除後の気持ちよさを実感していた。
「おや~高杉くんじゃないかー」
台所にはすでに銀時がいた。
牛乳パックを片手に持っている。
この瞬間お互いに、「嫌な奴と会っちまったな」と嫌な顔をして後悔をする。
(珍しいな。コイツがただの牛乳を飲んでるとァ)
甘党の銀時が好む飲み物はイチゴ牛乳のはず。
高杉が牛乳パックを凝視してるのを見て、銀時は何を考えてるのかを察した。
「悪ィな。賞味期限が今日だったから、お前の“必需品”は今俺が飲んじまった。だがお前がそこまで言うんだったら、別のもんが食料庫にあるぜ」
「そこまでも何もまだ一言も喋ってねェよ」
それはどういう意味だ?
必需品ってのァ何のための必需品だ?
(こんな奴が、アイツが松下村塾に入ったキッカケとはな…)
もしコイツのアホさが無ければ、雅はこの場にいなかったってわけか?
本当に皮肉だな…気に入らねェ…
高杉はこの時の気持ちを何というのかまだ知らない
銀時は冷蔵庫からゴソゴソとあるものを取り出して、高杉に投げた。
パシッ
(これァ…)
受け取って見たら、1本のヤクルコだった。
「俺もせっかくの休日を、てめーのせいで台無しにされるのなんざゴメンだ。ソイツが本命だろ?」
これは珍しく親切だった。