第3章 賞味期限切れにはご注意
あの無表情の雅が、物哀しそうに下に俯いたまま口に出した。
「…私が行けば救える命もある。それを…」
「それは違うぜよ」
緊迫した空気の間に、大らかな性格の坂本が加わった。
「確かにおまんはすごく頼れる。それにおまんには、おまんにしかできないことがある。だから、
・・
ここでいつものように、わしらを助けてくれ。わしらのできることは、戦に出ることくらいだからの」
口元にシワができるくらいの満面な笑みをした。
あまり笑わない彼女にとっては、縁もない表情で見つめられ、返す言葉に戸惑った。
「しかし…」
「そうしとけ」
坂本に続いて、今度は高杉も来た。
「コイツは脳天気のバカだが、言うことは正しい。てめェはてめェのできることをやれ」
辰馬を親指で指した。
「誰がバカじゃ!」「向きになるな」
坂本は桂に抑えられながらじたばたした。
雅はいつもの癖で、ため息をこぼした。
「…分かった」
手は引く。でも…
高杉らが門の方へ行こうとするのを止めた。
「だけど約束して…決して死なないと」
“アンタたちが戦で刀を振るう分、私もここで戦う
どんな重傷を負っても私が必ず治そう”
いつもの無表情である彼女でも、3人は何となく分かった。
「心配するな雅。わしらのしぶとさは敵も呆れるくらいじゃ」
辰馬はそう言って、雅の肩に手を置いた。
それは言われるまでもなかった。彼女が一番それを知っていた。
桂も彼女に軽い笑顔を見せた。
「今回は無理だが、また今度誘ってやる」
「何じゃグラ?デートに誘うみたいだな?」
「デートじゃない。ていうかヅラが
・
グラになってるぞ!文字入力はしっかりしろ!本当は桂だが」
「おい。行くぞ」
雑談してねーで早く行くぞと高杉は声をかけ、ようやく3人は大勢の志士を引き連れ、戦場に行ってしまった。
(………)
「もうみんな行っちまったか?」
銀時が何故か、お腹を抑えながら今更出てきた。
「…もうとっくに行った」
「くそっ。よりによって猛烈な便意が、俺を邪魔しやがった。だが戦では、誰も俺の邪魔はさせねーよ」
かっこつけて言ってるようなセリフであったが、全く格好良くなかった。
書物をトイレットペーパー代わりにした経歴があるくらい、この男は品がない。