第3章 賞味期限切れにはご注意
現在
〈広間〉
攘夷志士の皆は、大皿に盛られてるおにぎりを食べていた。
高杉は少し遅れて、桂と辰馬に合流した。
「遅いぞ高杉」
高杉を起こして先に広間に来ていたヅラは、お父さんのように腕を組んで座っていた。
家族との団欒の場である朝食に遅れ来た息子を叱るみたいに怒っていた。
「いいじゃないかァ。そんな固くならず」
桂とは逆に辰馬は高杉を庇った。
「お~。今日も金時がビリか。つくづく寝相の悪い男ぜよ。昨夜も思いっきり踏まれて眠れんかったわ」
辰馬はそう笑って別の話題を出し、空気を和らげた。
父息子の間を仲裁する母親のようだ。
すると高杉に続き、雅もやって来た。
負傷した志士の朝の検診を終わらせたあとだった。
「おぉ!おはようのう雅!」
辰馬は元気に大きな声で挨拶をして、雅は蚊のように小さな声で返した。
「銀はまた寝坊?」
「うむ。いつものことだ、全く」
桂は怒りの矛先を高杉の次に銀時に向けた。
雅も呆れたようにため息をつく。
(昔からの腐れ縁だが、未だにあんな男が、戦場では無敵と恐れられる“白夜叉”とは信じがたい…)
「起こしに行こう」
高杉が必要ねェと言いかけたその時、
「ヅラ!起こせって言っただろうが!」
ようやく本人が起きた。
「ヅラじゃない桂だ。俺は貴様の目覚まし時計になった覚えはない。武士たる者、自分の身は自分で管理するのは当然だ」
「何で高杉は起こすんだァ?何で俺だけ仲間外れなんだ?!」
「結局は起きてたじゃねェか」
「どうでもいいから早くご飯食べて。味噌汁が冷める」
「おまんら、どこの家庭の食卓なんじゃ?」
4人の会話を見て、珍しく辰馬がツッコんだ。
これが普段の5人の日常だ。
その後、
賑やかな朝食を済ませた、4人含めた攘夷志士の皆は外で出陣の準備をした。
桂は、この大人数をまとめ収める将として、一番前に立っていた。
「ヅラ…」
戦時の服ではない雅が、桂たちの出陣前に姿を現した。
「今日はここに残れ。皆の傷を癒してくれるだけで十分だ。お前は負傷者のそばにいてやれ」
今彼女が何を考えているのか、彼は分かっていた。
“戦に出たい”
しかし、今回はかなりの激戦と見受けられるから、連れて行くわけにはいかない。