第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ
少女は背を向けたまま、冷たい目で睨みつけた。
雨の中体は冷え切っているのに、その目は相手を凍らせるくらいの圧を放った。
しかし銀髪は顔色を変えず、ただ少女の目をじっと見つめた。
『…今言ったことは忘れろ』
銀髪は少女が座っていたところにドガッと腰をかけた。
『は?んなワケねェだろ。人間の俺に、「私は幽霊ですか?」なんて聞く幽霊なんざ聞いたことねェよ。もっとも、俺の近くには、幽霊なんかよりもっとおっかねェ奴がいんだ。てめーなんか可愛いもんだよ』
だから、私に…話しかけたのか?
ザーザーザー
雨は弱まるどころかさらに激しくなった。
ここから出ていきたい彼女に、反抗してるように。
…外に出るのは…難しいな
少女は仕方なく、雨が弱まるまでもう少し家屋に身を置くことにした。
…微かでも…人の気配がしたら、すぐ…ここから立ち去ろう
コイツの目的は知らないが…全くの無関係だからな
でも…もしコイツが…いつもの浪人や賊だったら、殺していたかもな…
少女は銀髪から距離を置いて座った。
「ここにいたのですか。銀時」
“!”
銀髪の目の前に、左手に編み笠と右手で傘を差した大人が立っていた。
なんだ…コイツ…
全く気配が感じ取れなかった。いつの間に、しかもこの家屋に入って。
その様子だと、銀髪の仲間らしい。
アイツの言ってた「おっかない奴」とは。
ガッ
少女はさっきと同じように、刀を構えて威嚇した。
しかしその男は、刀に目もくれず「こんにちは」とお辞儀をして挨拶してきた。
この男…私の刀が…見えないのか?
もちろん、その挨拶に応じる気もなく知らん顔をした。
見たところ男の特徴は、長髪の男で刀も所持している。上品そうな身なりをしていて、ガラの悪い賊ではなさそうだ
だが…相手がなんだろうと関係ない
ただ、ここを立ち去る動機ができた
『おや。君も、見たところ傘を持ってないですね』
銀髪と同じように、刀をむき出しの私に全く敵意を示さない。むしろニコニコして…
私に…馴れ馴れしくするな…
そもそも、この銀髪が私に話しかけたことが始まりだった
子供の面倒くらいしっかりしてほしいものだな