第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ
・・・・
(きっかけだと?)
初耳だ
コイツを拾ったっていう松陽先生なら分かるが…
あんなナマケモノみてーな性格とツラのバカが、コイツのきっかけになるほどの奴か?
「アンタは知らないよね。でもよく考えたら、言うほどそんな大したことはない」
誰にも言ったことないし、言うだけ無駄だ
「言い出したのはてめェだろ?気になるから続けろや」
あの雅がてめえからてめえのことを話したんだ。こんな機会他にあるめェよ
高杉は同時に、銀時が絡んだ話題により対抗心が沸いていた。
松下村塾からのライバル心が、この場でも燃えていた。
(その生意気な口調…松下村塾から相変わらずだな)
雅はハァとため息をついた。
「正確に言えば…拾ってくれたのは松陽で、
・・・・・・・
見つけてくれたのがアイツってところかな?」
雅はどうでもよさそうに話しても、心の中ではその時の自分を真剣に思い返した。
目を閉じて…
回想
~7、8年か前~
梅雨入りの雨の中、私は火事で焼けた家屋に身を寄せていた
手には使い古された刀一本、もう片方には小物道具が入った巾着
そして、1冊の書物を隠して持っていた
雨に濡れないよう、お腹と着物の間に挟んでいた
そのせいか書物に触れると、少し暖かい
突然の雨でなんとかここまで走って、着物は少し濡れたが、所有物は無事だ
周りは真っ黒焦げだが、幸い屋根がある
濡れて少し寒いが、しばらくここで雨が止むのを待つしかない
巾着袋から1枚の写真を取り出して、少しの間それを眺めた
(……)
また巾着の中にしまい、体育座りをして少し仮眠をとることにした
パチャ パチャ パチャッ
?
しばらくして、雨音に混じって誰かの足音が聞こえてきた
それもどんどん近付いて
伏せていた顔を上げると、目の前に銀色の髪の子供が立っていた
私と同じ、雨に濡れながら急いで来たらしい
編み笠を片手に持って、こちらをじっと見つめている
すると、その少年は一言だけ口にした
『すまねェ。ここらへんに、小便できるとこねェか?』
これが最初に、銀にかけられた言葉だった