第3章 賞味期限切れにはご注意
「いや絶対そうだろ顔赤いぞ。“晋助君”なんて似合わねーけどなププッ」
銀時は口を抑え、馬鹿にするように笑った。
さすが松陽にも手を焼かす悪ガキ。
相手を煽るのはお手のもんだ。
カチーン!
ついに高杉の堪忍袋の緒が切れた。
「上等だッ!呼ばれてやるよ!」
消灯後
銀時と桂(目を開けて)がスヤスヤ寝てる中、高杉はなかなか寝付けられない。
(クソッ。俺としたことが…)
アイツは強い。確かにそこは認めている
だが無愛想な上にそもそも女には…
(何考えてんのかも分かんねェ)
ああいうタイプは嫌ェだ
高杉は眠れないので、涼みに行くことにした。
〈松下村塾の外〉
きれいな夜空を見上げると、大きくてきれいな月が見えた。
(今日もまた随分と、でけェ月が出てるな…)
月を眺めることだけは好きだ
陽がねェおかげで、昼間と違って涼しい
(ったく。どいつもこいつも女相手になると…)
心地いい空気の中でも、高杉はさっきのむしゃくしゃを思い出した。
そしてふと、前から思ってたある疑問が浮かぶ。
(アイツ…何で独りなんだ?)
!!
そう思ってたら、近くに誰かいることに気付いた!
高杉は気付かれるよりも早く、サッと木の陰に隠れて垣間見た。
(あいつァ…!)
長い青黒髪の後ろ姿ですぐピンときた。
噂をすれば…あの女だ!
ソイツはピクリとも動かず、立っているだけだ。
(こんなとこで何してんだ?)
高杉は木の陰から離れて、月明かりを頼りに雅の様子を遠くから見た。
「!」
雅はその視線にようやく気づき、反射的に高杉の方に振り向いた。
(な…!)
ソイツは…
~~
「…………すぎ……かすぎ…高杉」
「!」
高杉は布団からガバッと体を起こした。
(い、いつの間に俺ァ布団に戻って…)
キョロキョロ辺りを見渡せば、すでに朝だ。
(夜、雅を見つけてそれで…)
「そろそろ起きろ。戦は待ってくれぬぞ」
目の前には青年姿のヅラがいた。いや自分もだ。
え、ちょっと待て…じゃあつまり…
「あ、あぁ…」
ここは松下村塾じゃねェ。俺たちは今、戦争の真っ最中だ
だがあんな明確で繊細な…
(全て夢だったのか…)
片手で頭を抱えて、寝ぼけてた自分を恥ずかしく思った。