第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ
もふもふして素材も良さそうな髪質。
この中でも1位2位で身長が高い2人が肩車すれば、どんな高さにも届きそうだ。
銀時のは白いから、汚れがすぐに分かるし実用性が高そうだ。
いくらド天然の桂でも、それはただの冗談でちゃんと別の仕事を任せた。
大掃除は順調に進み、気のせいか以前より屋敷内の空気が澄んでるように感じる。
廊下を歩いても、足の裏の肌触りなどですぐに分かる。
(足の方は思ったより早く治りそうだ)
普通ならもっとかかるが、それはきっと彼女がとても優秀だからなのだろう。
高杉はまだ汚れているところがないか、廊下を歩いて確認した。
(あれは…)
和室の方を見たら、雅が高いところに登っていた。
木製の脚立を使って、戸棚の上の何かを取り出してるようだ。
高杉は物取りに苦戦してる155cmの彼女に手を貸そうかと思ったが、少しマズい気がした。
身長のことはお互いに気にしていたから、雅の気持ちが何となく察しがついた。
もし手を貸したとして、彼女はそれを喜ぶのか?
物置からわざわざ脚立を持ってきたということは、誰かに頼むという選択肢はない上で、自分だけで何とかするつもりなのだ。
高杉も苦いエピソードを持ってる。
回想
棚の上に置いてあった備蓄品を取ろうと背伸びして取ろうとしたら、銀時がそれをパッと取って渡してきた。
((どういう風邪の吹き回しだ…?))
珍しく親切だなと少し見直しかけたが、それは善意でも何でもなかった。
「「お前、こんな高さも取れねェのかよ…」」
ただの、身長格差を見せつけるための嫌がらせであった…
高杉と銀時の身長差は7cmほどだ。
彼らの年頃を考えれば、他の男子との体格差を気にするのも無理はない。
そんな彼が、雅が自分の背の高さを気にしてるのをもちろん知っていた。
(アイツも…俺と同じたちでもあるからな。ここは手を貸さずに見守ってた方がいいか)
俺が逆の立場なら、手助けされる親切よりも自分のプライドを選ぶだろうな…
高杉が和室に足を踏み入れた。
その時…
ガタンッ
脚立の支柱の部分が急に外れた。
「!」
脚立が壊れた衝撃で雅は棚から手を放してしまった。