第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ
シーン
呼びかけても全く反応がない。
(聞き間違いか…?いや、確かに…)
そよ風が吹きゃ、葉音が聞こえても不思議じゃねェ。むしろ普通なことだ
だが今は、風も何も吹いちゃいねェ
微かに人の気配を感じたような…
高杉はその茂みを凝視しながらゆっくり近付いた。
(まさか…“アイツ”(雅)じゃないだろうな)
裏でコソコソ俺たちの会話を盗み聞きするなんざ
まぁ、アイツがそんなクドいこと絶対しねェなんて保証はどこにもねェが
むしろ、俺たちが気付いてないだけでいつもしてたりな
そんなことを考えながらまた、銀時だったら気色悪ィななどと思い、茂みに触れた。
「高杉。そんな所で何をしている?」
桂が高杉がいないことに気付いて駆けつけてきた。
「俺が今説明をしてたというのに。そうやってあとで質問されても、俺は何も知らないからな。人の話を聞くことも出来なかったらろくな大人にならないぞ」
学校の先生が問題児を叱りつけてるような、そんな言い回しをした。
(うるせェよ。てめェはいちいち言い回しがイラッとくるんだよ。誰かの真似でもしてんのかってくらい…)
「さっきお前がイラついた理由は分かる。恐らく俺もお前と同じことを思ってた」
珍しくあの喧嘩っ早い高杉に同感していた。
「だが、坂本に悪気があった訳ではないのだ。それは分かるだろう?」
「……」
高杉は無言で黙ったままで、どうやら心配なさそうだ。
「貴様は銀時相手によく逆上はするが、ストレスは良くないぞ。昔からそうだから、身体にも悪影響が出るんじゃないか?」
その言葉だけで、高杉は“身長”をディスられてることに気が付いた。
「おい。それァどういうことだ?俺の身体のどこが悪影響なんだ?」
今注意したばかりの奴がまさに今相手を逆上させてる。
お前が言うなとはこのことか。
話が終わり高杉は桂に続き戻ろうとしたら、ふと茂みの方を振り返った。
やっぱ、気のせいだったか…
〈寺の中〉
少しヒヤヒヤした朝が過ぎ、攘夷一行はそれぞれの持ち場で掃除をし始めた。
予想通り、家財の隙間には埃やクモの巣などが。
せっかくの休日だから早く掃除を終わらせることに、躍起になってる者も少なくなかった。
そして、高杉の担当は
(何で俺がコイツとなんだ?)
坂本と廊下の床拭きをしていた。