第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ
「む?そうなのか?」
高杉よりも早く桂が言葉に反応した。
「見られたくないもんでもあんじゃないか?アイツにも意外とそういうとこが…」
「危険な薬品とか、素人が扱えねェもんのことだろ。それにそれが普通の反応だろ」
高杉は急ぎ気味で、坂本の言葉に被せるように言った。
(一瞬、雅が疚しいものがあると想像しちまった)
そんなわけねェ
そもそもアイツは女だ。男相手に普通そう言うだろ
「高杉の言うとおりだ。アイツがそう言うなら、俺たちはただ従えばいい。
ひょっとしたらアイツは、本当は俺たちとの間に溝を感じているかもしれないしな」
すると周りは真面目な空気に変わった。桂の言葉が響いたのか。
戦が始まる前からすでに知っていた。
男女間の違いによって、自然と
・・
そうなってしまうことを。
高杉も、そのことは分かっていた。
それでもあの時、雅の参戦を許した。
彼女がそう望んでいたから。いや…
高杉は、あの討論の時を懐かしみ思い出した。
今なら分かる
(あん時、俺ァ多分…)
「もちろん開けるつもりはないぜよ。もし開けでもしたら、恩返しされずにバサバサーッと空に飛んでいってしまうかもしれん。ここはそっとしておこう」
辰馬は笑いながらお得意の冗談をかまし空気が変わり、それに周りの誰も笑わない。
「坂本さん。まさか雅さんの正体が鶴だとお思いなのですか?」
別の者が真面目に質問してきて、さらに状況はややこしく。
「さぁ~わしはアイツとの初見からそんな経ってないからの。おまんらは知っとんのか?」
「ああ。少なくともアイツは真っ当な人間で、お前はただのバカだってことはな」
高杉はやけに冷めた表情で坂本に言い返した。
「そうじゃな…じゃが、アイツを見て「本当に人か?」と疑ったことはあるがな」
ピクッ
「おい。それァどういうことだ?」
冗談地味た話に、高杉は詰め寄った。
「今の会話で思い出したんじゃ。アイツに初めて会った、商人のワシに医療物品を頼んできた時もそうじゃった。
商いで色んな者を見てきたワシからすると、アイツは並外れてるというか、まるで人じゃなく…」
ガッ!
高杉は坂本の襟元を掴んだ。
「高杉…!」
「てめェ…まさかそれを“アイツ”(本人)に言ったんじゃねーだろうな…?!」