第9章 親に見つかりたくねーもんがあるなら部屋は幾度か掃除しとけ
と、こういう成り行きで攘夷志士一行は大掃除という戦とは別の意味での戦いをすることになった。
初めは高杉も、せっかくの休日で乗り気ではなかった。
「大掃除?」
昨日はそんなこと一言も言わなかったし、急だな
「ここ最近は戦詰めで『大きく背伸びしてー!肩の力を抜…』く機会が必要だろう。
だからといって1日でもだらけてしまえば体力も衰え「アッハッハッハッ!」る。
そこで『ゆっくり体を柔らかく…』するのにこの場の浄化を…」
偶然なのかわざとなのか、ラジオ体操の音声とマッチングする中、桂はことの説明をした。
(体操すんのか話すのかどっちかにしろ)
あと、混じってたバカの笑い声は明らかにわざとやったろ
音楽がやっと終わり、高杉は廊下を降りて外へ来た。
「何で急にそうなった?」
「朝、酔い醒ましに歩狩汗飲もうと台所へ行った時じゃ。そこでゴキブリに遭遇してしまっての。しかもそれが1匹じゃなく何匹もいてワシは気付いてしまったんじゃ」
辰馬らしくない真剣な表情で真面目に話していた。
それなら戦や他の場面でもその真剣さを出せよ、と高杉は思った。
「最期にワシらが掃除したのは、もう数週間も前のことだと」
周りもその話を聞かされ、全員“掃除”というワードを頭に思い浮かべたと。
他の人は、厠にクモの巣が張ってあると。
また他の人は、洗面台の鏡が汚れてるせいで夜見ると幽霊が見えてきそうでしょーがないと。
(後者は恐らく“あのバカ”(銀時)だろ)
「とまあ、皆同意見で決まったことじゃ。一応せっかくの休みだから午前中には終わらせる予定じゃ」
もう話はまとまってるようで、高杉も「別にやりたくないわけではない」と、承諾した。
「そういや雅は?」
アイツがラジオ体操に参加するようなタマじゃないのは分かってるが、全く見当たらない。
「雅ならとっくに起きちょる。ゴキブリのこと話したら、「自分も部屋を片付ける」ととっくに取り掛かってるよ」
そう言って辰馬は、雅の部屋の方を指差した。
(あの部屋は、片付ける必要あんのか?)
いつもきれいにしてるくらい、全く物も散らかってねェし。そもそも物自体も医療関係以外何も無かったじゃねーか
「あと怖い顔して言われたんじゃが、「掃除中は絶対部屋に入るな」とな」