第8章 夜更けって怖いけど大人になった気分がしてワクワクする
雅は足元を念入りに見て歩き、銀時もそのペースに合わせて遅めに進む。
「こんな夜更けに。そんな大事なもんなのか?」
目を合わせず探しながら返事をした。
「仕事関係のものだから。まあ、もっと大事なものはあるけど」
2人は並んで歩き、銀時は今度は違う話をした。
「高杉が」
ピクッ
雅は、普通は気付かないくらい微かに形相を変えたが、銀時は気付いてた。
「随分お前のこと、気にかけてたぜ」
「………そう」
一見興味なさげな返事でも、頭では何を考えているのだろうか。
「お前は紅一点だからな。周りの野郎に目ェ付けられんのは仕方ねェっつーか。中にはしつこい奴もいるが、気にしない方がいいぜ」
「別にしてない。心配してるのは、アイツには私より“鬼兵隊”(自分の軍)を気にかけてほしい」
今回振り返ってみると、
馬薫との戦いでも雅を助けるために自ら出て、鬼兵隊と別行動を取った。
自分の率いる兵なのに彼女の安否を優先した。
助けてもらったことに関しては、彼女は高杉に感謝
・
はしてた。
雅は今度ははっきり顔色を変えた。
「幼なじみだからとか、そんな私情が仇になって戦の主導権を敵に握られでもしたら、私はアイツを許せなくなる」
「よし。そん時は俺が代わりにぶん殴ってやる」
そこは同じ幼なじみとしてフォローすべきなのに、雅に便乗した。
しかし、彼女はそれほどこの戦のことを考えているのだ。
誰かにちやほやされるのが嫌とかではなく、自分たちの戦況が悪くなるのを避けたいのだ。
彼女が冷徹と呼ばれることがあるのは、私意よりそんな戦への配慮を優先してるのが起因してるのかもしれない。
寝室前に着き、雅と銀時は互いに相手の顔を見た。
「結局見つからなかったな。明日見かけたら教えてやる」
「うん。頼む」
銀時は寝室に入ろうとしたら、肝心なことを言い忘れてたことに気付く。
「お前は大丈夫だと思うが、他の奴らに言うなよ。俺がお前の手を借りてここまで来たこと」
雅は首を傾げた。
「何のこと?私はただ探し物をしてただけ」
相変わらずだなと思うと、雅は俯いてボソッと呟いた。
「でも…
・・
またアンタと、こんな夜更けにバッタリ会うとは、思いがけなかったよ」