第6章 継続は力なり
「本当に、何も知らねーのか?」
疑った様子で銀時に問い詰めた。
「ヅラに一度聞かれたこともあったが、お前と同じように返した」
(ヅラが俺よりも先に?)
呆れた感じでため息をついた。
「「友が友のことを知るのは当たり前だ」なんてさ。どいつもこいつも雅雅と。一番の幼馴染みだからって、代わりにラブレター渡してほしいとかまっぴらごめんだってのに」
頭をかいて、面倒くさそうな態度をとった。
(コイツ…)
高杉は憶測した。
銀時は知ってんじゃなく、同じ境遇だった同士の何らかの繋がりを感じてんじゃねーか?
“独りさまよっていたところを拾われた”なんて妙な共通点があるコイツらが
「だが、てめーなら聞けんじゃねーか?アイツに無断入室OKされたんなら」
銀時はグーサインしてニタッと笑った。
「誰がそんなこと言った?てめーの耳は飾りもんか?」
そんな雑談を終えた2人は寝室に向かった。
高杉は最後に宴で雅に言われたことを思い返した。
『謝られても困るよ。それに、
アンタが部屋にいると、独りよりも悪くないなって思うことあるし…』
〈雅の部屋〉
「………」
雅は布団の上に寝そべり、左手の平を天井の灯りに重ね合わせて眺めた。
久し振りの酒と色んな人との語らいで、悪い気分ではなかった。
あの3人と並んでたら、松下村塾にいた頃を思い出した
まだ松陽先生がそばにいた頃
(懐かしい…)
冷静な雅でも、心中では松下村塾を、吉田松陽のことを本当に親しんでいた。
だが、一時だけそんな懐かしさに浸っても、戦場に行けば現実を見る。
ここでは仲間に慕われ、戦場では敵に憎まれる
誰に良く思われようと悪く思われようと、現状は何一つ変わらない
今日のよう、これからも天人を手にかける
そして仲間の命を救う
(“繋がり”を護る…か)
前も、“積み重ねてきたものは後に大きな力になる”なんて言って…辰馬らしい言い回しだ
上げていた左手を下ろした。
(ヅラもあんな大層なこと…)
希望があれば明日を見れる。もしそれがそうなら…
“いつかお前さんにも分かるんじゃねーか?”
私にとっての希望は一体…
左手の包帯をほどき、灯りを消して布団に入り静かに眠りについた。