第6章 継続は力なり
酒に酔って気分も良くした人たちは、自分たちの寝室へ足を運び、広間は喧噪から静寂へだんだんと変わっていった。
そろそろ行くかと、高杉は腰を上げて広間を出ようとしたら、さっきまでいた雅が見当たらないとキョロキョロした。
「雅ならもう部屋に戻るって言ってたぜ」
嫌な奴の考えてることはお見通しの銀時は、ひょっこり現れて、薄笑いを浮かべ教えてあげた。
「せっかく誘ってくれた奴に一言くらい声掛けてもいいのにな」
嫌みを込めた言い方で、相変わらず癪に障る主人公である。
「せめて夢の中で、アイツにちやほやされるといいな」
「待て」
銀時が部屋に戻るのを、低い声で呼び止めた。
「何だよ?そんなに怒ることか?」
見るからにわだかまってるような様子で、宴後のする表情をしてなかった。
そして、腹を据えて聞いてきた。
「お前、アイツの何を知ってんだ?」
文句を言われると思ったら、予想外のことで銀時は首を傾げた。
昔からの付き合いなのに、今更聞いてくるのも不可解だと。
「急にどうした?そんなに酔ってんのか?」
「真面目な話だ」
その本気の目を見て、銀時の笑みは消えた。
「てめーはヅラや俺よりも遥かに松下村塾にいた。ならアイツのことを誰よりも知ってんだろ」
「……」
室内にはすでに誰もいなく、2人の間に妙な空気が広がった。
銀時は何も言わずそっぽ向いた。
その様子は、何かを思い出してるような気がして高杉は返答を待った。
銀時は、特に嫌いな相手には「知らねーよ」と親切さのない返事をするはずだ。
それを言わないのは、もしかしたら心当たりがあるかもしれない。
「悪ィが、てめーが期待するようなことは言えねーよ」
期待外れの返答を吐き、背中を向けた。
「何考えてんのかよく分からねー奴なのは、出会った時からそうだ。今も昔も、アイツはアイツだ」
“出会った時から”と聞くと、自分よりもずっと付き合いが長いと若干の劣等感を抱いた。
「前も言っただろ。隠し事は誰でもあるって」
「…アイツの場合、隠してることしかねェよ」
そんな呟きに、銀時は振り向いた。
「ああいう弱み見せねー奴ほど、腹ん中には並々ならぬ事情があるもんだ。それをやたらと詮索すりゃ、アイツに嫌われちまうぜ」
高杉は不覚にも、銀時の言うことに合点が行った。