第6章 継続は力なり
“斬りすぎた”
それは、戦場で見たあの異常な数の死体を示唆した。
高杉だけでなく、桂も銀時もその言葉に薄々気付いた。
(俺もヅラの言うことには一理ある。戦死じゃなく過労死とかシャレにならねーからな)
彼女は昔から“出来ないことがない”なんて言われてる。
周りより上手くこなしてしまうから、自然と独りで事を済ましてしまう。
戦場に出ると自ら志願したのもそう。自分でやれることを全てやるために。
でも、それでは彼女に大きな負荷がかかってしまう。
桂が言った通り、雅はこの場所で必要不可欠、“希望”の存在でもある。
その存在を戦場で失う訳にはいかないと、誰もが思っている。
雅は長時間同じ体勢で足の痺れを感じて、坐り方を少し変えた。
「幸い明日は出陣がない。私も少し暇を貰うことにする」
「うむ。少しとは言わずゆっくり休め。お前ほどの者が過労死となると天地がひっくり返るからな」
腕を組んでる桂は笑って、雅に十分な休息を薦めた。
そして高杉は、それ今自分も思っていたと思いながら杯を飲んだ。
「でもよ。どっかのバカのおかげで、せっかくのプライベートルームでくつろげないんじゃねーの?」
銀時は明らかに悪意がある感じで、隣の奴に十分に聞こえるくらいの声で言った。
もちろんそれは誰を示してるか、他の3人もすぐに分かった。
「そうやっていつも人をからかったら、幽霊とか出るよ」
雅はからかい上手の銀時に冗談を言った。
「出ねーよ。そんな幽霊聞いたことねーよ」
もちろん、桂と高杉も聞いたことなかった。
「それに晋助を部屋に招き入れたのは私だ。私室にはいつでも処置ができるよう、医療道具は一通り揃えてある」
長い文で難しく言ってるが、要するに気にしないと言ってるのであろう。
「部活のマネージャーとさほど変わらない措置だし。さっき言ったように、私の部屋は保健室と何ら変わらない」
そうは言ってるが、高杉はそうなったきっかけは自分で何だか気まずくなってきたと、少し目が泳いだ。
過労死が何だとか思ってたのに、その自分が彼女の負担になってたと今更自覚した。
「な、なんか…悪ィな」
気まずさでつい謝った。
「謝られても困る。それに……」
そんなこんなで盛り上がった宴は、とうとう終わりを迎えた。