第3章 賞味期限切れにはご注意
「は?」
高杉と桂は予想外の返答にポカーンとなった。
「何でそうなる?」
「そうすれば平等になる…」
「何でだよ?てめーが氏言えばいい話だろ?」
高杉はらしくもなく女相手に熱くあたる。
「お前がそうしたいならそうしよう」
桂は雅に優しく言ったが
「アンタは…ニックネームあるらしいから“ヅラ”って呼ぶ…」
まさかのあだ名呼び。
「ヅラじゃない。それにそれは銀時に勝手に付けられただけで…」
「じゃあたまに名前で呼ぶ。アンタは…」
今度は高杉のことを呼び、本人はムッときた。
「おい。俺は呼んでもいいと一言も言ってねー。馴れ馴れしくするな」
そのふてぶてしい態度に、雅は黙り込んだ。
「私もその方が気楽…」
この時桂から見た彼女の表情は、少し寂しそうに見えた。
仕事が終わった桂たちはバラバラになった。
〈廊下〉
高杉は次の授業で教室に向かってるところ、後ろから桂が追い付いた。
「高杉。せっかく雅が打ち解けようとしてるのに、あの言い方はないだろう」
「何で俺がアイツに気遣わなきゃいけねェんだ?」
すると桂は真剣な顔になった。
「お前は聞いてないのか?先生から」
「は?何のことだ?」
辺りを見渡し、雅がいないことを確認してから高杉に教えた。
「アイツも銀時と同じ孤児で、独りでさまよっていた所を松陽先生に拾われたらしい」
独り?
「その前に何があったかは知らんが、氏を名乗れないのは恐らくその辺にあるんじゃないか」
…なるほどな。通りで周りと違うわけだ
ずっと独りぼっちだったって訳か?
周りに“可哀想”と思われてきたんだろうな
「それに雅は女の子だ。もう少し優しくしろ」
ヅラがアイツのことをそこまで言うとは。さては…
「ああ、そうか。お前ああいうのがタイプなんだな」
途端ヅラは焦ってから訂正した。
「そ、そういうわけじゃない!それにお前だって互角にやり合った仲じゃないか?もう少し関わってもいいんじゃないか?」
高杉は薄笑いをして言い返した。
「お前こそ何も知らねェだろ?アイツは独りが好きで、周りなんか眼中にない。俺たちが関わってもいつもつまんなそうにしてて、逆に迷惑になってるだけだ」
この時俺は 少なくとも、そう思っていた。