第6章 継続は力なり
隣の雅をチラッと見ると、思った通り いつものシケたツラでバカどもの語らいに、興味なさげに聞き流してる
そんな様子を見ると、少しばかり救われる
「そうだ!俺としたことが先に言うべきことが」
桂はここに来た理由をハッと思い出し、雅の方を見た。
「今回の働き、本当に見事だったぞ」
実際に執刀の補助をした桂は、彼女のあの時の集中力、判断力、自分よりも圧倒的な冷静さに驚嘆した。
まるで自分とは違う世界にいるようだった。
賞賛を送ろうにも、戦後の座敷ではいつも居なくなかなか出来なかった。
ので、今回はちゃんと言えた。
軍を率いる将として1人でも多くの者が救われることは喜ばしいことだ。
誰もがそんな彼女に畏敬の念を抱く。
普段も仲間に敬われてもやはり慣れない雅は殆ど無口で他人行儀な感じだ。
そんな様子に隣の高杉は、フッと笑みを浮かべる。
自分のことでもないのに、雅が称揚されてるのを見ると、不思議と自分も悪くない気分になった。
「お前は今までたくさんの命を繋いでくれた。そのおかげで俺たちは、仲間を失った絶望を経ても、また希望が持てるんだ」
「……」
桂の賞賛に対し、雅は変わらず何も言わなかった。いや、言えなかった。
今回ここに来たことで、戦の緊張感が皆無の皆と少しだけ語り合った。
そんな普段とは違う空気や体験が新鮮に感じられ、声を出すのを忘れるくらいぼんやりとしたのだ。
「希望があれば明日を見れる。そのぐらい俺たちはいつもお前に助けられてきたんだ」
(明日は休みだけど…)
薄々思ったが、今そんなこと言ってしまうとせっかくの空気を壊しかねないと、雅は黙った。
「あの激戦の後の完璧な執刀。さすがは俺たちの女医だ!
・・
攘夷だけに」
最後の言葉が余計すぎて、せっかくの空気が灰になった。
白けた空気を入れ替えたら、桂は雅に別のことを話した。
「しかし、お前には負担がかかり過ぎだと思う。これからは前線に出るのをもう少し節制した方が良いと思うが」
その提案に雅は少し考える仕草をした。
「…検討しておくよ。確かに今日は斬りすぎた」
(……)
あの雅が前線から退くのをすんなり考えるとは、今回相当疲れたんだなと高杉は思った。