第6章 継続は力なり
噂をしてたらその本人がやってくる。
ドラマではよくあるシチュエーションだ。
よりによって、その悪口を聞かれてしまうパターンが多いのは、言った方が
それに気付いたときの間抜けヅラが面白いのと、
しばかれるお決まりのオチが読者の遊び心をくすぐるからであろうか。
そして、この前ページや回想に入る前からして、高杉による辰馬への“天誅”は読者の方々も想像できるだろう。
現在
まさにその通りの展開になった。
雅はそれには興味ゼロで無関係のように、隣で飲んでいた。
周りはそんなごたごたに慣れてるようでゲラゲラ笑っていた。
ボコられた上酔った辰馬は、別の場所へ引きずられて誘導され退場した。
高杉はやれやれとため息を付いた。
「お前ェそれ、全部飲んだのか?」
雅の足元には、途中から来た奴のとは思えないたくさんの空の酒器が
「・・・。喉が渇いてたから」
間を空けてから返事をした。
何を言うか少し考えて言ったのがこれだ。
しかも、同時進行でまた新しい酒瓶を杯に注いだ。
「水でも飲め」
水が入った自分のグラスを渡し、雅はそれを飲んだ。
「アンタは何でここに?自分が噂されてるのを探知できる妖術でも持ってるの?」
「テメーが酔った辰馬に絡まれてたから」と言おうとしたが、さっき言われたことがパッと頭の中に浮かんだ。
『高杉さんと雅さんはお付き合いされているのかと』
(………)
信頼に足る黒子野に、まさかあんなこと言われるとァ
(とんでもねェモン残しやがってあの野郎…)
落ち着かない様子でいる高杉に、何となく声を掛けた。
「立ってるのはなんだし、隣座れば?」
「…そう…だな」
自分から言うよりも、雅から言われたのは意外だった。
ピタッ
実際座ってみると、部屋にいたときより密着した。
ここの人数に対し広間はそんなに広くないので、宴の時は結構すし詰めになるのだ。
普通にお互い膝が当たり、高杉は親身になってあぐらから立て膝に変えた。
「別に気遣わなくていい。アンタの好きな姿勢でいればいいよ。また足痛められたら困る」
「私は気にしない」と言った。
「…そうかい。じゃ遠慮なくそうすらァ」
膝が若干当たりながら、2人は隣り合わせで酒を飲み始めた。