第6章 継続は力なり
「何がだ?」
「高杉さんがそのくらい、雅さんの気持ちが分かることが…」
俺?
てっきり話の流れで雅のことかと思ったが
黒子野は苦笑いをして目を伏せた。
「僕からしてみれば、高杉さんも攘夷四天王の皆さんはこの中では特別な方たちだ。特別な人には特別な人しか相応しくない。平凡以下の僕では肩を並べることもおろか雅さんにとっても僕なんか…」
「お前…」
じゃあ今こうして話してんのも、俺が仕方なくやってると思ってんのか?
それに、アイツはお前のことを…!
「…と以前は思っていました」
少し顔を上げて高杉のことを見た。
「隣じゃなくてもいい。こんな僕でも尊敬してる人に一回だけでもいいから、「任せる」と言われたい。
そして今日、その人が僕にそう言ってくれました」
高杉のことを任されたとき、本当に嬉しかったのだ。
雅はいつも独りで、手を借りることなく何でもこなす。
その彼女が人にものを頼むのは、余程のことがない限り滅多にない。
だから、あの彼女が頼ってくれたことは、何よりの驚喜だった。
(そうか…アイツが)
話を聞いてる内に、黒子野に言わなければならないことを思い出した。
「…前は悪かったな。お前にキツいこと言って」
「え?」
何のことかと全く覚えがなく首を傾げたが、高杉は覚えている。
黒子野がういろうを持って廊下で鉢合わせした時のこと
『いや、誤解です。確かに雅さんは優美で素敵な女性ですが、僕はそういう意味では…』
『おい。そろそろ止めとけ』
雅は自分を戦とは関係のない、そんな風に見られるのを毛嫌いする
だから俺もアイツが自分の仕事に専念できるよう、気分を害さねェよう周りにも気を遣った
今回、黒子野がアイツを尊敬してることも
自分でも少し神経質になりすぎたと反省しなきゃならねェこともよく分かった
「いえ、そんなこともう気にしてませんよ。ですが……いや、なんでもないです」
「何だ?はっきり言えよ」
何を躊躇ってんだと思いながら、また酒を飲んだ。
「僕はてっきり、高杉さんと雅さんはお付き合いされているのかと思っていました」
「!!」
あまりの爆弾発言に、飲んだ酒が喉に通らず咳き込んだ。