第6章 継続は力なり
「あ?」
つい声が出てしまうほど、少し衝撃を受けた。
黒子野は人間観察が趣味で、その能力は人の心の内を見透かすこともある。
相手が自覚してないことも含め。
「「本当に」ってのはどういうことだ?」
「えっと。僕が言いたいのは、幼なじみの高杉さんなら、雅さんへの思いやる気持ちが誰より強いのはおかしくないというか、当たり前だなと」
「……」
確かに、アイツとは付き合いが長いからその分関わり合いもある。だが
高杉は苦い顔をした。
「“俺は”じゃなくて
・・
“俺たちは”の間違いだ」
自分ではなくこの軍
・・
全体にとってだと強く訂正した。
「俺がアイツを気にかけるのは、今までも今回もそうだ、この戦で欠けちゃならねェ存在だからだ。アイツ自身も自覚して、ずっと何かしらを背負って戦っている。
幼なじみだから他とは違って特別とか、そんな私情は挟んじゃいねーよ」
もっとも、アイツは俺にそう思ってるのも明らかだ…
“大切”という言葉に強く反応したのは、奇妙な目ン玉の天人の時
『? 少し違うな…恐らく貴様はあの女が…』
ガァン!!
言葉を遮るように不意打ちをしたが、天人はそれを余裕の表情で受け止めた。
『フッ。それほど“大切”なようだな』
『てめェ…』
らしくもなく不意打ちをして、その上天人に惑わされ負けそうにもなった
本当に気色悪い敵だった
同じ言葉を二度も違う奴から言われるのも、いい気はしねェな
「でも…そんなに難しい話でしょうか?」
黒子野は顎に手を添えた。
「高杉さんが仰る通り、彼女はこの戦で唯一戦場でも執刀が出来るほどの術を持つ人です。でもだからこそ、彼女自身が他の人と違うのは明白です。誰だって特別視しますよ」
「……」
高杉は言われるまでもなく、そのことを誰よりも知っている。
桂も初期、雅の参戦に一番反対していた。
そして彼女はそれを拒んだ。
あの討論を懐かしく思い出される。
「確かにこの場では特別かもしれねェ。だがアイツは、昔からひいきに思われるのが好きじゃねェ。
俺も奴のそんな気持ちくらいは分かる」
俺も幼少期は、生まれやつまらねェ肩書きなんぞにうんざりした時期もあったからな
すると黒子野は悲しげに苦笑をもらして言った。
「少し…羨ましいです」