第6章 継続は力なり
「いッ、ぃや…酒が…詰まった」
喉元に触れてゆっくり息をし、また調子を戻した。
「ほんまに大丈夫か?!血ィとか吐いてないかッ?!」
デカい声のせいで、4秒ほど周りから注目を浴びた。
(声だけじゃなくリアクションもオーバー過ぎだ。面倒臭いなコイツ)
それをもっと別の所に生かせないのかこのビッグボイスは
本当に大丈夫なのを確認し、珍しく動揺した坂本もホッと安堵した。
「勘弁しとくれよ。おまんが病気とかなったら、わしも高杉も度肝抜かれるぜよ」
また、急に第三者を持ち込んできた。本当に面倒臭いコイツ
坂本は子供に言い聞かせるよう次々に話しを持ち出して、雅はそれを興味なさげに聞き流す。
「おまんは周りからの信頼も厚いが、夜寝込みを襲われない保証もないからの。特に高杉とかに気ィ付けるぜよ。
なんなら今日そうならないよう、わしが部屋で見張ろうか?」
アンタも私にそうしてこない保証もないだろ
さっきまで心が動かされる話をしたのに、それを台無しにするよう、全く別の話題へ動かされた。
酒で気分が良くなって、酔い始めてるのであろうか。
「アイツは一見女に興味なさげにしちょるが、何考えてるか分からんぞ。ああいう人前でかっこつけちょる奴ほど、裏が黒いっちゅーからな。取り柄と言えば顔くらいじゃよ」
「辰馬。アイツに何か恨みでもあるの?」
さっきから高杉高杉と、人を愚痴る性格だったかなコイツ
坂本がそんなに気にするのには少し理由があった。
「おまんは戦の帰りで、アイツと揉めとったんじゃないのか?」
「!」
見ていたのだ。
・・
あの一部始終を。
高杉が、雅の落とした物を拾おうとしたら、彼女が拒んだ所を。
彼女自身忘れかけてたが、今言われて思い出した。
「あれは…」
あ…!
「もしアイツに何かイジワルとかされたら、すぐわしに言うぜよ。今日されたみたく、顔面に一発くらいかましてやるぜよ」
袖をまくって握り拳を作った腕を見せた。
その前にアンタは自分の顔面を見た方がいい
飲み過ぎで顔が赤い
(いや、それよりももっと見るべき所が…)
雅は何か言いたげだ。
「アイツと部屋で二人きりも感心せんの。これからは高杉に注意して…」
「俺がなんだって?」
坂本はえ?と後ろを見たら、そこに高杉が立っていた。