第6章 継続は力なり
坂本は雅の酌を旨そうに飲む。
「ほんじゃ聞きたいことっちゅーのはな。おまん、あの戦で何かあったのか?」
さっきの高杉と同じようなことを聞かれた。
「何か元気がなさそうに見えてのう」
(いや。いつもと何も…むしろアンタが元気あり過ぎだ)
「元気百倍アン○ンマン並にいつもいるコイツなら、子供番組でもセンター余裕に狙える」くらい
酒を片手に、坂本は続けて聞いてきた。
「遅れてきたのも、高杉に何か話したんじゃないかァ?」
それは…
“化物がッ!”
「……」
雅はあの天人の言葉を思い起こし、それを打ち消すようにグビッお酒を飲んだ。
「…いや、いつもと何も変わらない」
目を反らし、すげない返事をした。
戦にいること自体惨劇なのは変わらない
何を言おうが、敵だろうが誰かに恨まれることも変わらない
この先も、そん中で戦い続けることも変わらない…
ただ、今回の戦で分かったことはある
「辰馬。アンタは言ってくれたけど、私は大将に向いてない」
騒がしい祝宴にも関わらず、彼女は自分の部屋と変わらないくらいの物静かさを感じた。
その中で、またあの戦を思い起こす。
自分は独断専行で今回も仲間を1人、助けることができなかった
もっと早くにあの天人を仕留めていれば良かったのか
あの人を救うのにもっと別の道はなかったのか
それは、“死神”と呼ばれる私の“業”(ごう)か
その名の通り、あの天人を死に至らしめた
そして、救えなかった仲間も
敵は殺しても、味方までも死なせてしまった…
「雅。あれを見るぜよ」
彼女が思いにふけてるのを断つように、坂本は指差し注意をそらした。
指された方を見ると、そこには戦場で雅の手術を受けた患者の親友がいた。
(あの人か…)
「あそこに、おまんが今日助けた奴の親友がおるじゃろ?あんな楽しそうな顔しとるじゃないか」
坂本の言う通り、あの恐怖で青ざめた顔とは真逆で、なかったかのよう仲間たちと楽しくお酒を飲んでいる。
「医術の欠片もないわしじゃが、だからこそ素人のわしにはこれだけは分かるんじゃ」
またいつもの笑みを浮かべてビシッと言った。
「“おまん”(医者)の出来ることは、ケガした者たちを助けるだけじゃない。
その者たちの“繋がり”を護ることじゃ」