第6章 継続は力なり
雅は口元に手を当て、坂本の言うことには一理あると思った。
(何の話かは知らないが、聞くだけ聞こうか)
というなりゆきで、雅の左隣に坂本で、高杉は少し離れた所に座った。
ガヤガヤ
(やはり落ち着かないな)
自分の部屋とは全く違い騒がしい
部屋でもこの広間の喧噪は若干小耳に挟むが、ここまでとは
そして、何より…
「ほんじゃ!見事な勝ち戦に乾杯といこうかァ!!」
喧騒をさらに増大させる、声がデカいバカが現在進行形で私の隣を占領している
左隣の坂本を見て「またさらにうるさくなるな」と予想がついた。
だけど、うるさいのはいつものことだ。それよりも本題に入ろう
「で、聞きたいことって何?」
「まあまあ、そんな堅苦しくせず飲め飲め」
会社の部下に発破をかけるように、坂本は雅に酌をした。
彼女も流されるままにそれを飲むと、気持ちがフッと和らぐ
「いい酒だな」
「お?おまんも結構鋭いな~。それはなかなかの上玉の一品じゃ」
勝ち戦ではいつも、上等の酒をみんなで呑むのが暗黙の了解なのだ。
「かなりの酒好きで強いのは耳にしちょる。初め聞いたときは意外だったの~。そういう所はおまんと気が合いそうじゃな」
坂本もこの中でもかなりお酒が強いらしい。
飲み比べでもほとんど勝つとか。
「人を飲んだくれみたいに言わないでほしい。あと設定では、アンタらより少し年上だから」
“初期設定を忘れてしまう”
長編アニメやマンガではあるあるだ。
自分でも察しがつく
・・
意外というのは、見た目と年齢が全く噛み合ってないということだ
今回の戦でも、“人は見た目が肝心”なのはもう噛みしめている
雅は律儀なので、ちゃんとお返しで坂本にも酌をした。
「商いを営むアンタなら、商売関係の依頼人とのお酒での親睦は珍しくないでしょ」
さすが医師をやってるだけあって、物事の思考も冴えている。
「仰る通りじゃ。同窓会や合コンでも、1人酒が飲めずに気まずくなるのもごめんじゃからな~」
(いや何の話だ?)
意外と楽しそうな会話をしている2人だが、本題に入るような気配が全くしない。
(私は遊女じゃあるまいし、うまい話をするほど器用じゃない)
もしこの場でそんな扱いされるために呼ばれたとすれば、いい気はしない