第6章 継続は力なり
「おかげで痛みも大分マシになった」
雅はそれを受け取った。
「一応あげるつもりだった。お返しなんていいのに」
「治りかけの俺よりも、いつも患者看てるてめーが持ってた方がいいだろう」
そんな会話の中、高杉はハッと思い返した。
(黒子野みてーに、何か菓子でも選別すりゃよかったな)
食糧庫にそんな都合のいいモンあったか?
渡した物をちゃんと返すという律儀な所が意外で、雅は疑念を抱いた。
「ひょっとしてこれ、ホワイトデー?」
「!」
平然と聞いてきたのに対し、高杉は驚き慌てて咳き込んだ。
「そ、そういうわけじゃねーよ!貰ったもんを返しただけだ」
頭の中で“菓子”のワードを展開してたことにより、余計あたふたした。
「“お返し”だから、そういう意図があるかと思った」
もし高杉が昨日の更新日に、薬だけでなく甘味も渡していたら、俗に言う“お返し”(ホワイトデー)になっていたということだ。
といっても、雅の反応からすると完全に義理扱いだが。
(待てよ。自分から普通に聞くってことァ、貰っても鬱陶しくはねェってことか?)
本気で渡すつもりなのか、真剣に考え始めた。
人付き合いを好まなくても、野郎からの厚意を踏みにじる奴じゃねェ
表情筋はほとんど機能してなくても、腹ん中では喜ぶんじゃ…
雅は塗り薬を着物にしまった。
「取りあえず、返してくれてありがとう」
2人はまた、広間に向かった。
〈広間〉
襖を開けると、まだ宴は十分に盛り上がってる様子でいた。
ワイワイガヤガヤ
「こんな盛り上がってんだ」
盛大に祝ってる様子を雅は眺めて呟いた。
「いつもと変わんねェよ」
すると、1人の志士が高杉が帰ってきたことに気付いた。
「高杉さん。戻ってき……ッて雅さんッ!」
その周りの志士も、珍しいゲストに歓喜に沸いた。
「珍しいですね!よかったらご一緒しませんか?」
またいきなり誘われ内心焦る雅に、高杉は「来い」と腕を掴んで誘導した。
向かった先は、いつもの面子の所。
「おお、待ってたぞ」
ようやく来た主役に、坂本も喜んで迎えた。
「お~、おまんら!遅かったな!高杉はホワイトデーでもあげてたのかァ?」
その話題はもういい