第6章 継続は力なり
2人は自分の出した手を見つめた。
(……負けた)
(本当に勝っちまった…)
お互いこの展開は予想外らしい…
雅はため息をついた。
(ヤベッ。荒唐無稽過ぎたか)
妥協して運任せのジャンケンで決めたが、本人の表情からして呆れてるようだ
雅はスッと立ち、机に広げてある書物や器具を片付け始めた。
「夜の検診はとっくに終わった。今夜は予定ないからね」
(つまり…)
それは「行く」ってことか
彼女の返事にホッとした。
いやいやではなさそうだし、向こうに行きゃきっといい暇(いとま)になるだろう
普段は執刀とか医師の仕事だなんだで、休養もろくにとってなさそうだしなァ
雅は自分の握り拳を見つめた。
「おかしいな。“喧嘩はグーでやるべし”って聞いたのに」
「いやそれいつかの(銀魂の)タイトルだろ。ジャンケンって喧嘩なのか?」
片付けが終わり、雅は部屋を出ようとしたら何かにぐいっと引っ張られた。
「?」
何だと思い振り返ると、高杉が雅の左手を掴んでた。
「何」
「お前、何でいつも左手に包帯巻いてんだ?」
ずっと前から気になっていた
松下村塾で初めて会ったときも、手術をするときも、左手に何かしら付けていた
外した方がやりやすいのにな、なんて思ったことも
利き手を保護するためか?ファッションじゃないよな?
「……早く行こう」
何も言うことはなく、高杉の手をそっと振り払い部屋から出た。
高杉も雅に続いて部屋を出た。
〈廊下〉
2人は横並びではなく、高杉が前で雅が後ろの並びで広間に向かった。
後ろから見られてるようで、何かぎこちない
「おい。何で俺が前でてめーが後ろなんだ?」
しかし、雅は高杉と横並びが嫌とかではなく考えなしでもなかった。
「アンタの歩き方を見ている。前より良くなってるから安心したよ。直にぎこちなさもなくなる」
俺は生まれたての小鹿じゃあるめーし…
「そうだ…!忘れてたよ」
高杉は足のことを言われ、一旦止まり着物から何かを取り出し雅に差し出した。
「返し損ねたが」
それは、出陣前に雅が渡した塗り薬だった。
「ああ、それか」
小瓶の中の減り具合からして、あの戦で使ったんだ