第6章 継続は力なり
高杉は、彼女の性格をよく知っている。
「通り名なんて、誰が付けたか分からないあざなだ」と言うことも想像がつく。
しかし、だからこそ心配なのだ。
雅が自分のことを聞いてきたのは、
本当は、自分が“そう”呼ばれるのを気にしてるんじゃないかと思ったのだ。
彼女が、今までどれだけの支えになってきたか、幼なじみでもある高杉は見てきた。
それなのに…
高杉は雅の横顔を眺めた。
(“死神”なんか畏怖され、しかも当の本人が真に受けてんのがどうもな…)
天人がコイツを“化物”なんぞと罵ってると思うと、不服に思えてしょーがねェ
確かに人並みじゃない所はある
だが、何も知らねェ天人どもがコイツを語ること自体が
「ハァ…こんなこと話しても後ろ向きになるだけか。暗い話をして悪かった」
「いや…むしろ俺は…」
「そういえば…!頬の傷はどうなった?」
雅はふと高杉の傷のことを思い出した。
「あ…あぁ。血はとっくに止まってるが」
高杉は左側の髪をあげて見せた。
「普段は髪で隠れるけど、古傷になるね」
あげた髪を直し、傷なんか気にしねーと言いかけたら、ここに来た本当の目的を思い出した。
「そーいや…今、野郎共と酒宴やってんだ。お前もどうだ?」
「え?」
独りを好む点では雅と共通する高杉は、今回はきっとコイツにいい息抜きになるだろうと密かに思ってた。
「辰馬に言われた?」
「それもあるが、アイツらきっとてめーがいねェと寂しいと思うぜ」
※自分が寂しかったくせに…
「いや、私は…」
雅は俯き思い悩んだ。
宴なんて自分に縁のないエンタメで、行くことを躊躇してるかもしれない
そして、本心では行きたいと思ってるかもしれない
(だが無理強いさせるのもな…)
俺は辰馬のようにデリカシーがない訳じゃねー
だったら、
「じゃあジャンケンで決めるか」
「いや何でそうなるの?」
高杉の突拍子もない提案に、雅はツッコんだ。
「悩んでるくらいなら、こっちの方が手っ取り早いだろ」
確かにそうだけど
「……分かった」
雅は釈然としないが承諾した。
お互いに手を出し、結果は
高杉がパーで雅がグーだった。