第6章 継続は力なり
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現在
ジー
薄暗い中、窓の外から虫の鳴き声がよく聞こえてくる
もうすぐ夏なのを知らせているんだ
物静かな夜よりも、虫の鳴き声一つでもあれば不思議と落ち着く
雅は窓の外をずっと眺め、物思いに耽ていた。
今まで、仲間の命を生かし敵の命を奪ってきた
どちらに転がろうが、そのたびに手は血に染まる
今回も、数多の敵を斬ってあの天人を殺すことも厭わなかった
相手が誰だろうと何だろうと、“敵と味方”、この二つだけ分かっていれば、それ以上のことは知る必要もなく、勝手に成り立つ
それが戦場だ
『医者が…生かすより殺すのを選ぶのか?』
あの天人は言った
私を“化物”か何かを見るような目をして
人を生かすためにいるはずの医者が、人を殺めるのは可笑しい。その通りだ
そんな私が“人じゃない”と呼ばれても、可笑しくない話だろう
人間でもない奴からでも
アイツの言ってたこと全て間違ってない
自分でも分かっていたさ
それでも私はこの戦場に立つことを選んだ
この手をさらに血に染める道を選んだ
たとえ周りに何と言われようとも、何と呼ばれようとも
天人は彼女をこう呼んでもいた。
青い髪に左利きの女
生と死の狭間に君臨する存在
その冷ややかな表情や、ぞっとするような冷淡な眼は
まさしく死神の如く恐ろしい
翡翠の巫女とは全く別の通り名。それは…
“青い死神”
戦で彼女を目の当たりにした天人らは、女とは、いや普通の人間とは思えないその様子に、愕然とした。
銀時が白夜叉と呼ばれ、敵ももちろん仲間にも恐れられるように。
仲間の方は雅を、“いつも手当てしてくれ命の恩人”と尊敬し親しんでいる。
しかし敵は、戦での雅しか知らない。
奴らにとっては、“容赦なく殺す冷血な死神”と見えるのだろう。
それは、もちろん攘夷四天王含め仲間たちも知っている。
この異名が広まった頃、「雅はそんな人じゃない」と天人に反発する仲間や、彼女を気遣っていた人もいた。
しかしそれに対して雅はたった一言だけを口にした。
“むしろ、私に似付かわしいよ”
全く気にも留めてない様子でいた。
しかし高杉は、雅がそう言ったことが今でも引っかかっていた。