第6章 継続は力なり
雅はいつも以上に冷淡な目で、仲間を殺した相手を睨んだ。
「そんな手を使って、今まで生き残ってきたってわけか。情が移るよう嘘までついて…」
見逃してくれた相手の隙につけ込み殺す。そんな卑怯な手で
「う、嘘じゃないんだ。家族がいるのは本当だ!」
何としても助かりたいと必死に言い訳をする。
「だとしても…アンタに同情も慈悲も全くない…」
殺された仲間にも家族がいた
コイツに同情してしまったのも…
「仕方なかったんだ!
俺は…好きでこの場所にはいない!そもそもこれは、お前たちサルが起こしたものだ!」
この天人は自ら戦に出たのではなかった。
「貴様らの下らないプライドで、俺のよう出たくもない戦に駆り出される者は山ほどいるッ!」
侍たちは、自国が天人の支配下に置かれるのを拒み、天人を打倒せんと攘夷を掲げた。
そして天人側も対抗し、圧倒的な数の兵を送り込んだ。
しかしその背景に、徴兵制で強制的に戦に送られる者も少なくなかったのだった。
「国を守るだ?反乱などせず、大人しく国と“我ら”(天人)が協定を結べば誰も死なずに済んだ!この戦で貴様らが死ぬのは自業自得だ!」
「……」
天人の侮辱に癇癪も起こさず、
ひれ伏している天人に刀を向けて言った。
「アンタの言ってることは間違ってない。けど…私にとっちゃ、国なんかどうでもいい。勝手に腐ろうが知ったことじゃない。そんなもののために…私はここにはいない…」
この国に忠誠を誓ったことは一度もない。これからも
私がいるのは、もっと
・・
別の理由だ…
天人は助かりたい一心でまだ戯れ事を言う。
「医者が…生かすより殺すのを選ぶのか?俺を殺せば、俺を生かしてくれたあの仲間の死が…無駄になるぞ」
そんなの…
「アンタに…そんなこと言う権利なんかない」
「!」
天人は雅を再び見ると驚愕した。
「き、貴様、“それ”は…?!」
恐怖し地べたを這いずり逃げても間合いを詰められる。
「く、来るなッ!」
彼女は刀が十分届くまで距離を縮め、もうこれ以上戯れ言に耳を貸す気もなく、刀を振り上げた。
「…ッ!化け物がッ!」
その一言で一瞬腕を止めるも、雅は自分では気付かず不敵な笑みを浮かべた。
「否定はしないよ」
そして、天人にとどめを刺した。