第6章 継続は力なり
気付けば敵はほとんど殲滅した。
「こっちも片付けました!」
仲間の方も大丈夫そう
刃こぼれがないか確認し、まだ残党がいないかも確認しに見回った。
(!)
気配を感じて見ると、たくさんの死体の中に何かが紛れうずくまってる
何かといっても見当はついてるが
「それで隠れているつもり?」
静かな声の殺意と圧力に、その何かはおののき姿を現した。
その正体は思った通り、
腰が抜けて動けない天人1匹
武器を持たず、恐怖しこっちを凝視している
(だけど、見過ごすわけにはいかない)
斬り合いの中に、たまたまコイツがいなかっただけ
雅は刀を向けると、震えてた天人は急に声を上げた。
「ヒィィッ!お、お願いだッ!見逃してくれ!死にたくないィ!」
助けてくれと命乞いをしてきた。
「敵に助けを乞うとは。そんな覚悟でこの戦場に立ったの?」
戦場の過酷さをよく知る彼女は、天人の命乞いを気にも留めない。
天人は頭も下げ、さらに声を張った。
「ま、待ってる家族がいるんだッ!この戦で、何としても生き残りたいんだ!頼む!!」
「雅さん。これは…」
仲間はこの様子に躊躇するような視線を送った。
「少しでも心に隙ができれば命取りになる。敵に情けなんかかけるつもりもない」
敵との間合いを詰めようとするが、仲間は彼女の刀を持つ左手を掴んで止めた。
「でも、帰りを待ってる家族がいる者を手に掛けるなんてやっぱり嫌です!たった1人見逃したって…」
「さっき倒した天人にもいたはず。コイツと何の違いがあるの?」
人情溢れる性格で、他の仲間からの信頼が厚いその優しさは、たとえ敵でも同じ生きる者として見逃したいという気持ちを生んでしまった。
互いに自分の意志を変えなかった。そして
雅さん。ごめんなさい…
仲間は雅を天人とは反対方向に突き飛ばした。
「なッ…!」
男より腕力が劣る彼女は、力では敵わなった。
仲間は天人に「立てるか?」と手を差し伸べた。
天人も「ありがとう」と笑みを浮かべた。
(待ッ…!)
しかし、それは間違いだった
天人は差し伸べられた手を取ると同時に、もう片方の手で懐から小刀を抜き、仲間の胸に突き刺した
それは、助けにいくには一瞬すぎた