第6章 継続は力なり
しんみりとした顔なのはいつものことだが、今日はまるで何かを思い悩んでるようだった
雅は高杉の方に目を向けた。
「私からすれば、あの患者よりもそれを心配してたあの人の方が危ないと思ったよ」
「?」
どーいうことだ?
俺は医術に関しちゃド素人だ。コイツの考えてることが読めねェのは、多分そーいうのがあるからだろうな
高杉がそれくらい、彼女を理解しようと気に掛けているのは、昔からの付き合いや、ほっとけないという思いが人一倍強いからなのだろう。
雅は深刻そうに、その時のことを思い返した。
「自分は何も出来ず、大切な人が目の前で死ぬなんて。辛いに決まってる…」
「!」
あの人は、
兄弟も同然の親友が、自分を庇うために自ら飛び込んで、あの銃弾の数を食らってあんな瀕死の状態に陥ったと言ってた
確かに、高杉の言うとおり結果論で考えれば問題はない
けど、もし手遅れになってたら、きっとあの人は…
あの辛そうな顔が、今も頭に残ってる
「ケガなら技術と薬さえあれば治せる。けど、大切なものを失った痛みは、簡単に治すことは出来ない」
「……」
高杉は、雅の言うことがよく解っていた。
目の前で松陽先生を連れ去られたあの時を経験してたからだ。
自分の唯一の理解者とも言える人。
それほど大切な人を失った辛さは、その分大きい。
(コイツ。前、俺に「仲間想い」なんて言ってたが。何言ってんだよ)
俺よりもテメーの方がそうじゃねーか
あんまつれねェ奴でも、それでも周りを見てんだ
どんなに馴れ馴れしくされんのが好きじゃなくても、コイツは傷ついた奴らを絶対見過ごさねェ
周りがテメーのことをどう言おうと、俺は少なくとも、
お前のそういう優しさは知ってるつもりだ
「お前、俺と合流する少し前に何かあったのか?」
「……」
その様子から見て、やはり何かあったに違いなかった。
雅は自分の左手のひらを見つめた。
「助けられなかったんだ。1人」
助けられなかった?
「もう少し早ければ。いや、あんな殺され方……」
左手を握り締めた。
高杉はあの雅がそこまで言って悔しがってるなんて、意外で驚いた。
「何があった?」
あの時、あの場所で……