第6章 継続は力なり
嘘つく時くれー、少しは表情変えろ紛らわしい
「てめーがジョーク言うなんざ珍しいもんだな」
「そうでもない。アンタのような奴には、いつもこうやってドクターストップかけてるんだ。ほとんどの奴は信じ込んで無茶しなくなる」
それ“脅し”の間違いじゃねーか…?
「現に銀にも、いづれ糖尿病になるって言っておいた」
「いやそれは本当じゃねーのか」
※事実、ギリギリなります
足の治療が終わり、雅は救急箱を棚にしまった。
「それに、仮に足や腕が切断となっても、むしろ私はそれが専門だからいつでもできる。今までやってきたから何の問題もない」
(……)
それは、年頃の女の子が言うようなセリフではなかった。
(それを平然と言ってるてめーが問題だ)
いや違うだろ。元々俺は雅が心配でここに来たんじゃねーか
危うく本当の目的を忘れそうになったぜ
「…お、俺よりもお前の方はどーなんだよ?」
「なんのこと?」
「戦場でお前、様子が違かったっつーか…」
高杉は自分の首に手を当ててかしげた。
「……どういう意味?」
雅は真剣な眼差しをして、まるで警戒してるような雰囲気だ。
「いや、お前が…笑ってたように見えたんだ。あの……執刀ん時」
(そこじゃねェよ。俺が聞きてーのは)
聞くだけなのに、何でこんな手こずってんだ?
「……」
雅はまたお得意の黙りを決め込み、また目を反らしてようやく口を開いた。
「あの時だけは…
そうしなきゃだめだって思っただけだよ」
(?)
彼女も自分があまり笑わないのは自覚しており、今回もそうだった。
「あんな顔見せられたんだ。あの人はあのままだとパニックになり得たから、私はただいつもと違う対応をしたに過ぎないよ」
つまり、コイツにとっちゃ理由や理屈がある上で仕方なく笑ったってワケか?
あんな優しいツラが…
(笑うなんざ、何の理由もなくするもんだろ)
お前もよく知ってる声がバカでけー馬鹿だってそうだろ?
「何にせよ、結果が良けりゃあ全て良しっていうだろ。あの危なかったけが人もお前のおかげで助かった。もう少し喜んでもいいんじゃねーか?」
高杉は喜ばせたいのか笑う所を見たいのか、積極的に声を掛けた。
しかしそれでも、雅の浮かない顔は変わらなかった。