第1章 デジタル長谷部
「あの、長谷部・・・?」
再びブラウザ画面に戻し、もう一度画面の中の長谷部に話かけてみる。
「はい、なんでしょう」
「・・・あの、これって、なんなんでしょうかね?」
「主が何の事を言っているのかよくわかりませんが」
「siriみたいな物なの?」
「私は尻などではありません」
「ごめん、そうじゃなくて。なんで画面の中のキャラクターと話が出来るのかなって」
「何故と申されましても、俺達は最初からこうでしたよ」
「マジで!?なんで教えてくれなかったの!?」
「臣下たるもの、主から求められていないのに話しかけるなど失礼な事は出来ませんよ」
マジかよと思いつつも、
このゲームを始めた頃の事を思い出す。
あれ、今まで結構独り言を口にしながらプレイしていたような気がするんだけど。
出陣で思わぬ強敵に「くそっ」と吐き捨てたり、
顕現した刀がお目当てではない男士だった時も
「またお前か」と毒づいたり・・・
あれも全部聞こえてたって事!?
「えぇ、俺達には全て届いていましたよ」
その瞬間、私はPCに向かって机に額をこすりつけていた。